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皮膚に貼り付け可能なディスプレイを実現東京大学 横田 知之,染谷 隆夫

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 ウェアラブルエレクトロニクスは,装着するだけで脈拍や心電図,血中酸素濃度といった装着者の健康状態を簡単に測定できるエレクトロニクスである。近年,健康への関心が非常に高まっており,このようなウェアラブルエレクトロニクスは非常に注目を浴びている。我々の研究グループは,薄いぺらぺらの基板上に大気中で動作する有機の発光素子と受光素子を作製することに成功した。本技術は,ぺらぺらな基板の上にデバイスを作製しているため,皮膚の上に装着感なくデバイスを貼り付けることが可能である。
そのため,顔や手に貼り付けることでディスプレイとして用いることができ,さらに発光素子と受光素子を組み合わせることで,血中酸素濃度計を作製することに成功した。
 図1に顔に貼り付けた青色の発光素子と手に貼り付けたディスプレイを示す。発光素子は,厚さ1.5マイクロメートルと非常に薄い基板に作られている。合計の厚さも3マイクロメートルと非常に薄く,表皮の10分の1以下の厚さである。そのため,顔や手に非常によく密着して貼ることが可能である。さらに,このようなぺらぺらなデバイスは,非常に柔軟性に優れており,厚さ100マイクロメートル以下のカミソリ上にデバイスを置いても壊れず,くしゃくしゃにしても壊れずに発光することができる(図2)。
 また,このようなぺらぺらな赤と緑の発光素子に有機の受光素子を組み合わせることで,血中酸素濃度計を実現することに成功した(図3)。従来の血中酸素濃度形は非常に固く,装着性があまりよくなかった。今回我々の開発したフレキシブルな血中酸素濃度計は非常に薄いため,指に巻き付けて血中酸素を測定することができる。また,非常に密着性良く指にデバイスを装着することができるため,脈拍や血中酸素濃度を非常に安定して計測することができる。
 さらに,今回作製したぺらぺらな発光素子は,伸縮性のあるゴムのような基板と組み合わせることで,伸縮性を持たせることができる。まず,伸ばしておいた伸縮基板にペラペラなデバイスを貼る。そのあと基板を元の状態に戻すと,有機発光素子は,アコーディオンのような構造を作る。この構造のおかげで,有機発光素子は図4のように伸ばすことが可能である。
 このようなフレキシブルで伸縮性持たせることができるぺらぺらな発光素子,受光素子は,ウェアラブルエレクトロニクスの向上と新たな展開につながることが期待される。

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OplusE 2016年8月号(第441号)

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