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複数台カメラによる高解像度全天周オーロラ映像の撮影国立極地研究所 宙空圏研究グループ・准教授 片岡 龍峰

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 近年のデジタル一眼レフの高感度化に伴い,円周魚眼レンズを用いた夜空全体のフルカラー全天周インターバル観測が流行し,2015年3月現在ではオーロラ研究のためのモニタリングデータとして世界の観測所で有効利用されている。我々の研究グループでは,数km離れた2地点で同時に撮影することで,オーロラの高さ分布を推定できることも示してきた(参考文献)。ただし,一眼レフの四角い画角と円周魚眼という組み合わせは必然的に無駄も多く,その解像度に限度があるため,オーロラの微細構造までは分解できない。また,円周魚眼視野の端に近いほど画質は犠牲になってしまう。そこで我々は,際限なく解像度を上げた全天周撮影を手軽に実現するための基礎実験として,今回5台の一眼レフカメラを用いて解像度を高める撮影実験を行った。
 撮影場所はアラスカ大学のポーカーフラット実験場である。屋上のアクリルドーム越しに室内から空を見渡せるロフトに機材を設置し,パソコン制御でカメラ5台同時にシャッターを切る。このインターバル撮影を2015年2月から約2か月間,毎晩10時間ほどのプログラム観測を全自動で行った。5台のデジタル一眼レフには,それぞれ対角魚眼レンズを用いて東西南北と上方向に向け,素子の縦横をちぐはぐ直角に設置することで,全天周をできるだけ一様に正面から捉えるように配置した(図1)。撮影した5枚の写真は,オーバーラップする視野を用いて滑らかに接続し,1枚の円周魚眼フォーマットに再合成した。その結果,現在のデジタルプラネタリウムで再生可能な最大限の解像度である全天周8Kオーロラ映像を取得した(図2)。実際にプラネタリウム上映して見た感想としては,従来の全天周3Kオーロラ映像とは格段に違い,アラスカの現場で作業している錯覚を覚える程度に感動的な美しさであった。本研究の複数台カメラを用いた科学データ取得方法により,カメラの台数を増やせば増やすだけ解像度を上げることができる一方で,小数台構成でローコストを追及してネットワーク観測の展開も加速できる。今後は,複数台カメラ撮影を前提にした新しい科学観測の展開も期待される。

参考文献

  • Kataoka, R., Y. Miyoshi, K. Shigematsu, D. Hampton, Y. Mori, T. Kubo, A. Yamashita, M. Tanaka, T. Takahei, T. Nakai, H. Miyahara, and K. Shiokawa, Stereoscopic determination of all-sky altitude map of aurora using two ground-based Nikon DSLR cameras, Ann. Geophys, 31, 1543-1548, 10.5194/angeo-31-1543-2013.(2013)

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