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宇宙から雨と雪を三次元でスキャンする宇宙航空研究開発機構(JAXA)地球観測研究センター(EORC) 可知美佐子,久保田拓志,沖理子

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 「雨」や「雪」は日本人にとって身近な気象現象であるが,実は,我々が生活する地球表面よりさらに上空にも存在する。また,日々の天気予報でおなじみの地上の気象レーダは,マイクロ波を発射しながらアンテナを回転し,半径数百kmの範囲に存在する地表付近の雨や雪の分布を得るが,日本のように密な観測網を持っている国は一部の先進国に限定され,さらに海上の観測は沿岸近くに限られる。このように,地上観測だけでは,地球全体の雨や雪を把握することは難しい。しかし,衛星に気象レーダを搭載すると,広範囲の降水を海陸の区別なく,しかも三次元的に観測できるのである。
 二周波降水レーダ(DPR)は,JAXAが情報通信研究機構(NICT)と共同で開発した「雨」や「雪」を観測できる唯一の衛星搭載降水レーダであり,平成26年2月28日に打ち上げられた,日米共同ミッションである全球降水観測(GPM)主衛星に搭載されている。「二周波降水レーダ」の名称のとおり,Ku帯(13.6GHz)とKa帯(35.5GHz)の2つの異なる周波数のレーダから構成されている。Ku帯は熱帯や中緯度に多い,強い雨を観測するのに適しており,逆にKa帯は中高緯度の弱い雨や雪を観測できるのが特徴である。2つの周波数による観測を組み合わせたアルゴリズムにより,強い雨から雪までをカバーした降水の三次元分布を得ることができるのである。
 図1は,DPRで,高度407kmの上空から観測した,日本付近の春先の温帯低気圧による降水の三次元分布である。DPRによる観測データから,このときの降水の高さは約7kmであり,温帯低気圧の北西側(図の左側)では海面付近で雪になっていたと考えられる。また,図2は沖縄付近の梅雨前線に伴う降水システムの三次元分布であり,このときの降水の高さは14km近くにまで達し,さらに強い雨の領域は塔状に伸びて高さ7km近くにまで及んでいた。図1や図2では,降水分布の内部構造が見えるように,衛星の進行方向に沿って断面を切っているが,約245kmの観測幅で,高さ19kmまでに存在する雨や雪の分布を,水平方向5.2km,鉛直方向250mの分解能で詳細に観測している。つまり,身体の内部をCTスキャンで調べるように,雲の中のどの高さに雨や雪が存在するのかを三次元に詳細にスキャンすることができるのである。
 DPRをはじめとしたGPM主衛星による観測データは,平成26年9月から,JAXA G-Portal(https://www.gportal.jaxa.jp)のウェブサイトより一般に公開されている。また,GPM主衛星やDPRが観測した画像や動画は,JAXAのGPMウェブサイト(http://www.eorc.jaxa.jp/GPM)で公開されている。日本から離れた海上にある台風の内部の降水はどうなっているのか? ぜひご自分の目で確かめていただきたい。

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