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質感の画像記録と再現凸版印刷(株) 長谷川 隆行,三好 裕樹,飯野 浩一

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 物体の特徴を伝える上で,形や色といった視覚情報を扱う画像は重要な役割を担う。しかし,物体の視覚情報は単に形や色だけで定義されるものではない。人間が物体の質感を知る手がかりとなる陰影や光沢など,照明方向や観察方向によって変化する要素も含まれる。撮影から画面表示や印刷に至る従来の画像伝達系では,特定の照明の下で特定の方向から物体を見た,その瞬間を切り取って画像再現しているにすぎず,そこから物体の質感を網羅的に知ることは困難であった。そこでわれわれは,これまで研究開発を進めてきた,色を正確に記録・再現するカラーマネージメント技術に加え,物体表面の微細凹凸や光沢特性といった質感情報をデジタル撮影によって記録し,コンピューターグラフィックス(CG)を用いて質感をより効果的に再現する技術を開発した。
 方向依存性のある質感情報を撮影で記録するには,照明方向,あるいは観察方向の異なる複数の画像が必要となる。下記事例で用いたシステムでは,カメラは固定し,照明位置を変えながら物体を撮影する。そして,得られた入射光と反射光の方向・強度の関係を画素単位で解析し,物体表面の微細凹凸情報である法線(面の向き)と,色や光沢などの光反射特性である双方向反射率分布関数(BRDF)を復元する。われわれの開発したアルゴリズムでは,これらの質感情報を非線形最適化によって安定的かつ高速に導出できる1)。
 得られた法線とBRDFから,CGの光反射計算により,所望の照明条件・観察方向における物体の見えを画像化することが可能である。しかし前述の通り,特定の照明条件・観察方向の見えだけでは質感を十分に伝えることはできない。そこで,マウス操作で照明位置をリアルタイムに動かし,自由な照明位置での物体の見えをディスプレーに再現するビューアーソフトや,タブレット端末の傾き検知機能を利用して,仮想照明条件下での物体の傾きに応じた見えの変化をリアルタイムに端末に表示するビューアーソフトを開発した。
 図1は,前者ビューアーソフトを使った本技術の美術作品への適用事例である。金泥や銀泥で彩飾されたこの作品の見えは,照明方向によって大きく変化する(図2)。照明環境の固定された通常の美術品展示では見ることのできない様々な表情を来館者に提示することを目的とし,東京国立近代美術館工芸館で開催された企画展「クローズアップ工芸」(2013年9月14日?同年12月8日)にて展示協力を行なった。  今後は,電子書籍や電子カタログの画像コンテンツに対する質感の付加など,新しい画像表現手法として本技術の展開を図る。

参考文献

  1. T.Hasegawa, N.Tsumura, T.Nakaguchi, and K.Iino:“Photometric approach to surface reconstruction of artist paintings,”JEI, Vol.20, No.1, pp.013006-1-11(2011)

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