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上空9,000mからの地表面観測データを機上で即時処理・地上へ伝送情報通信研究機構
上本 純平, 児島 正一郎, 浦塚 清峰, 梅原 俊彦, 小林 達治, 佐竹 誠, 松岡 建志, 灘井 章嗣

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 SAR(synthetic aperture radar)はパルス圧縮技術と合成開口処理技術を組み合わせ,昼夜問わず地表面等を高精細に観測可能な映像レーダーである。情報通信研究機構(NICT)では,災害発生時に被災地の状況を広域かつ高精細に把握し迅速に観測データを提供する技術の開発を主目的の一つとして,世界最高レベルの30cm分解能で地表面を観測できる航空機搭載SAR(Pi-SAR2)を2006年から開発・運用している。一般にSARの観測生データ量は膨大であるが,機上で画像化処理できる機上処理装置を用いる事で,2011年の東日本大震災緊急観測時には地震発生から24時間以内での観測画像提供を実現した。しかしながら,当時の機上処理装置での画像生成は判読性の高い多偏波疑似カラー合成画像では無く単偏波の白黒画像に限られていた(図1参照)。
 多偏波合成疑似カラー画像を機上で生成するには従来比で3倍以上の高速化が必要である。高速化検討当時(2012年)想定のCPU(83Gflops/消費電力130W)でそれを達成しようとした場合,サーバ用ラック2 台以上,消費電力10,000W以上の構成となり,機上搭載は不可能である。そこで近年科学技術分野での利用が進んでいるGPGPU(generalpurpose computing on graphics processing units)を適用し,処理ソフトウェアをGPGPU向けに最適化する事で問題の解決を図った。SAR観測データの画像化処理演算の根幹は,膨大なピクセルに対する観測信号と参照信号との相関処理であるため,並列処理が得意なGPGPUと相性が良い。GPGPUを用いる事で新機上処理装置の設置スペース/消費電力をそれぞれ1U/930Wに抑えつつも,処理範囲1 km × 1 kmにおいて4倍程度の高速化を達成し,多偏波合成疑似カラー画像の機上生成が可能となった。図2は新機上処理装置と商用通信衛星を組み合わせた機上処理・地上伝送イメージである。また,利便性向上を目的に,観測情報付きのKMZ,及びHTML形式で処理画像を出力する機能を新たに追加した。
 図3は2013年8月20日実施の桜島緊急観測の際に実際に機上処理・地上伝送した観測画像である。伝送のため画質は落としてあるが,Pi-SAR2の高い空間分解能により火口や山の斜面の細かい起伏形状等を見て取ることができる。2013年8月の実証実験により,観測から10分以内で多偏波合成疑似カラー画像を地上伝送できることを確認した。
 今回の新機上処理装置の開発により,これまで処理生成に一日程度要していた多偏波合成疑似カラー画像を観測後すぐさま機上から提供する事が可能となった。これにより,自然災害発生時の被災地の状況把握に対してこれまで以上の貢献が期待される。

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