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太陽フレアの発生原因となる磁場構造名古屋大学 太陽地球環境研究所 草野完也

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 太陽フレアは黒点の周辺に蓄積された磁気エネルギーが突発的に解放される現象です。そのエネルギーは水爆の100万倍以上にも達するため,フレアの影響は地球環境や社会基盤にも与えられます。1859年にフレアに伴って発生した歴史上最大級の磁気嵐がもし現代に起きれば,通信・電力網などに2兆ドルを超える甚大な被害を与えると試算されています。
 フレアは黒点につながる磁力線が複雑に絡み合い不安定化する結果として発生すると考えられていますが,そのメカニズムの詳細は十分に解明されていません。このため,フレアが「いつ」「どこで」「どれ程の規模」で現れるかを正確に予測することはまだ実現できていません。
 最近われわれはこの問題を解決するため,100通り以上の異なる磁場構造についてスーパーコンピューターを用いた大規模な数値実験(図1)を行い,フレア発生の条件を探りました。その結果,ねじれた磁場中に「反極性型(OP)」または「逆シア型(RS)」と呼ばれる2種類の特殊な構造を持つ小規模な磁場が現れたときにフレアが発生することを見いだしました(図2)。さらに,発生するフレアの規模は大規模な磁場のねじれが強いほど大きくなることも明らかにしました。
 この結果を検証するため,日本の太陽観測衛星「ひので」が太陽光学望遠鏡で2006年と2011年に観測した大規模フレアのデータを解析したところ,シミュレーションが予測した磁場構造のいずれかが太陽表面に現れた数時間後に,その領域で太陽フレアが発生したことを確認しました(図3)。さらに,過去に観測された複数の太陽フレアも,予測に一致する磁場構造を伴っていることを見いだしました。
 この研究は特定の磁場構造がフレア発生の条件であることを示唆しています。それ故,太陽磁場の光学観測からフレア発生を事前に予測することも可能であると考えられます。フレア発生の機構解明と予測は太陽のみならずさまざまな天体や実験室などに現れるプラズマ爆発現象の理解につながると共に,フレアから人工衛星や通信・電力システムを守るためにも極めて重要です。現在われわれは,人工衛星による観測データとコンピューターシミュレーションの連携によってフレアを予測する新しい研究に着手しています。

参考文献

  1. K. Kusano, Y. Bamba, T. Yamamoto, Y. Iida, S. Toriumi, and A. Asai : “ Magnetic field structures triggering solar flares and coronal mass ejections,” The Astrophysical Journal, Vol. 760, No. 1, article id. 31(2012)

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