「Bio-Texture Modeling®(生体質感造形®)」を用いた実物大臓器立体モデルによる手術支援神戸大学大学院 医学研究科消化器内科 杉本真樹
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情報通信技術(ICT)の進歩は,医療情報とくに医用画像のデジタル化を大きく推進し,画像診断も大きく進歩した。その活用範囲は診断目的から治療支援へと広く拡大し,外科手術においては,一般的に“手術ナビゲーション”や“ナビゲーション手術”として,手術とその誘導,支援などの総括として広く一般化した。この手術現場における安全性と正確性を追求するために,われわれは医療における三次元画像解析と,工業におけるラピッドプロトタイピング技術の融合によって,Bio-Texture Modeling(生体質感造形)という新技術を開発した(特許申請済)。
3種類のモデル材樹脂を同時噴射し得る3Dプリンターを用い, DICOM*画像解析アプリケーションOsiriXにて, MDCT(Multi Detector-row Computed Tomography;コンピューター断層撮影装置),MRI(Magnetic Resonance Imaging;核磁気共鳴画像法)などの医用画像診断装置から得られたDICOMデータを用い, 臓器の内外構造をおのおの三次元形状データへ変換し,ブーリアン演算により感触等価パラメーターにそれぞれ樹脂種別を定義して三次元的に臓器を造形した。多素材混合噴射による一括積層により複雑な解剖を0.016mmの精度で忠実に再現し, 素材噴射をコンピューター制御することで, 強度や密度などの物性を制御し, 軟硬樹脂の混合造形により,臓器の質感(柔らかさや表面形状, 触感など)を精密に再現した。透明樹脂を用いた実物大臓器立体モデルは,臓器内部構造を可視化し, 全方向からの視覚に加え, 立体モデルに実際に手で触れることで医用画像では伝えきれない多くの情報をもたらした。すでに診断治療戦略の立案や,インフォームドコンセント,医学教育・研究の場で活用されている。さらに,穿刺・切開・剥離や縫合・結け つ紮さつなどの治療手技や手術のシミュレーションとして利用され,手術中にも滅菌処理によって手術ナビゲーションとして活用が進んでいる。
この画期的な技術は,すでに医療の枠を越えさまざまなシーンで活用され始めている。 医療機器開発や動物実験の代用としても活用されている。ヘルスケア分野では,生体医療情報から日々の微妙な変化が可視化され,継続的に造形することで病気の早期発見や健康生活の維持につなげることができる。また本人以外の家族や友人でも生体の造形物に触れることができ,自然に人が集まり,健康を気遣いあうことができるようになる。教育の現場では,医学教育における人体解剖の理解はもちろん,一般教育や家庭でも,小児期から人体の神秘に気づき,命の尊さを実感することができる。
このようにデジタルとアナログの融合によって,医療に革新的なシナジー効果を生み出すことができた。これまでコンピューター画面内にとどまっていた貴重な医療情報を,まさに可視化し,形にして,文字通り手に入れることができたといえる。外科医としてのニーズから始まった生体質感造形Bio-Texture Modelingは,もはや医療の領域を超え,人類を大きく前進させるポテンシャルを秘めた,革新的技術であるといえる。
3種類のモデル材樹脂を同時噴射し得る3Dプリンターを用い, DICOM*画像解析アプリケーションOsiriXにて, MDCT(Multi Detector-row Computed Tomography;コンピューター断層撮影装置),MRI(Magnetic Resonance Imaging;核磁気共鳴画像法)などの医用画像診断装置から得られたDICOMデータを用い, 臓器の内外構造をおのおの三次元形状データへ変換し,ブーリアン演算により感触等価パラメーターにそれぞれ樹脂種別を定義して三次元的に臓器を造形した。多素材混合噴射による一括積層により複雑な解剖を0.016mmの精度で忠実に再現し, 素材噴射をコンピューター制御することで, 強度や密度などの物性を制御し, 軟硬樹脂の混合造形により,臓器の質感(柔らかさや表面形状, 触感など)を精密に再現した。透明樹脂を用いた実物大臓器立体モデルは,臓器内部構造を可視化し, 全方向からの視覚に加え, 立体モデルに実際に手で触れることで医用画像では伝えきれない多くの情報をもたらした。すでに診断治療戦略の立案や,インフォームドコンセント,医学教育・研究の場で活用されている。さらに,穿刺・切開・剥離や縫合・結け つ紮さつなどの治療手技や手術のシミュレーションとして利用され,手術中にも滅菌処理によって手術ナビゲーションとして活用が進んでいる。
この画期的な技術は,すでに医療の枠を越えさまざまなシーンで活用され始めている。 医療機器開発や動物実験の代用としても活用されている。ヘルスケア分野では,生体医療情報から日々の微妙な変化が可視化され,継続的に造形することで病気の早期発見や健康生活の維持につなげることができる。また本人以外の家族や友人でも生体の造形物に触れることができ,自然に人が集まり,健康を気遣いあうことができるようになる。教育の現場では,医学教育における人体解剖の理解はもちろん,一般教育や家庭でも,小児期から人体の神秘に気づき,命の尊さを実感することができる。
このようにデジタルとアナログの融合によって,医療に革新的なシナジー効果を生み出すことができた。これまでコンピューター画面内にとどまっていた貴重な医療情報を,まさに可視化し,形にして,文字通り手に入れることができたといえる。外科医としてのニーズから始まった生体質感造形Bio-Texture Modelingは,もはや医療の領域を超え,人類を大きく前進させるポテンシャルを秘めた,革新的技術であるといえる。
※ Digital Imaging and COmmunication in Medicine。米国放射線学会と北米電子機器工業会が開発した,CT,MRI,CRなどで撮影した医用画像のフォーマット。また,それらの通信プロトコルを定義した標準規格のこと。
参考文献
- 杉本真樹:“ 生体質感造形Bio-Texture ModelingTMとOsiriXを用いた臓器立体モデルによる手術ナビゲーションと触力覚手術シミュレーション”, 消化器外科, Vol. 5, No. 1, pp. 101~108( 2012)
- 杉本真樹:「医用画像解析アプリOsiriXパーフェクトガイド」, エクスナレッジ( 2011)
- 杉本真樹:「消化管・肝胆膵ベッドサイドイメージング Mac 対応フリーソフトウェアOsiriXでつくる3Dナビゲーション(DVD 付)」,へるす出版( 2009)
- 杉本真樹:「DVD 3D 臨床解剖アトラス CT・MRIとOsiriXで再構成された動画ライブラリー」, メディカ出版, 大阪( 2012)
- 杉本真樹,松岡雄一郎,田中紘一,F. Volonte,P. Morel,東健:“OsiriX Stereo 3D 可視化技術と光学的電力学的センシングを統合したリアルタイムロボット手術ナビゲーションシステムの開発”, 日本コンピュータ外科学会誌, Vol. 12, No. 3, pp. 192~193(2010)
- 杉本真樹,安田秀喜,幸田圭史,鈴木正人,山崎将人,手塚徹,小杉千弘,樋口亮太,植村修一郎,土屋博紀,平野敦史:“ 先端医療と内視鏡外科手術:OsiriXによる内視鏡外科手術・NOTESナビゲーションの有用性:Wireless motion sensing 追従ナビゲーションとimageoverlay surgery”, 日本内視鏡外科学会雑誌, Vol. 13, No. 6, pp. 693~702( 2008)
- M.Sugimoto, M.Tanaka, Y.Matsuoka, M.Man-i, Y.Morita, S.Tanaka, S.Fujiwara, and T.Azuma: “da Vinci robotic single-incision cholecystectomy and hepatectomy using single-channel GelPort access,” J Hepatobiliary Pancreat Sci., Vol. 18 No. 4, pp.493~498( 2011)
参考URL
- Bio-Texture Modeling(生体質感造形),http://biotexture.com/about/btm.html