【重要】技術情報誌『O plus E』休刊のお知らせ

高速に動く物体の3次元動画イメージング京都工芸繊維大学*,株式会社ホログラム工房**,神戸大学***
角江崇*,米坂綾甫*,田原樹*,粟辻安浩*
西尾謙三*,裏升吾*,久保田敏弘*,**,的場修***

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 ホログラフィーとは物体の3次元像を記録できる技術であり,3Dディスプレイ技術として利用されている。近年は,CCDなどの撮像素子でホログラムを電子記録し,物体の像をコンピューターで再生するデジタルホログラフィーが注目を集めている。われわれの研究グループでは,動く物体の3次元像を高精度計測できる並列位相シフトデジタルホログラフィーを発明した。本技術では,位相シフト干渉法に必要な複数の干渉像を空間多重化した1枚のホログラムを記録し,このホログラムから物体の像のみを計算により抽出できる。そのため,ワンショットで物体の3次元像が得られる。われわれは本技術を用いて,スプレーから発せられる圧縮ガス噴霧の様子の高速位相イメージングに成功した。透明物体の位相イメージングにより,物体の厚みや屈折率などの3次元情報を計測できる。
 図1に示す,スプレーノズルから発せられる圧縮ガスを物体とし,ガス噴射によって引き起こる位相変化をイメージングした。撮像には,(株)フォトロン「FASTCAM-SA5-P」を用いた。図2,図3にそれぞれ,ホログラムを毎秒2万および18万コマで記録して得られた再生像を示す。圧縮ガスは無色透明であるため,空気の位相変化を256階調の疑似カラーにてイメージングし,ノズルの再生像は位相値0(黒色)で表示した。このように,位相の折り畳みが生じているが,圧縮ガスによって空気の位相が時間の経過に伴って変化する様子を観察できた。非常に興味深いのは,噴霧開始から約100ms 経過すると,空間的に周期的な位相分布が形成されるのを観察できた点である。達成したコマ数は,著者らが知る限りデジタルホログラフィーのみならず,3次元イメージングで世界最高速度である。
 本技術は,エンジン開発における燃料噴霧の3次元計測,工場の生産ラインにおける部品・製品検査,生細胞の動態解析など,幅広い分野における,高速に動く物体や高速な現象の3次元動画像計測への適用が期待できる。
 紹介したコマ送り写真は,動画として見るとさらに興味深い。以下の論文のホームページにて,動画付きの電子版論文をダウンロード・閲覧できる。

参考文献

  • -T. Kakue, R. Yonesaka, T. Tahara, Y. Awatsuji, K. Nishio, S. Ura, T. Kubota, and O. Matoba: “High-speedphase imaging by parallel phase-shifting digital holography,” Opt. Lett., Vol.36, No.21, pp.4131~4133(2011)
    http://www.opticsinfobase.org/ol/abstract.cfm?uri=ol-36-21-4131

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