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“しわ”が織りなす多彩な微細凹凸構造東京理科大学 遠藤洋史,田村眞弘,河合武司

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 みなさんは,“しわ(リンクル)”と聞くとどんなイメージをお持ちだろうか? 年齢とともに増える目尻や顔のしわは,多くの場合,嫌われる存在であろう。しかし,しわは時にその人に表情や個性を与え,年齢に応じた美しさを生み出す。しわをはじめとする凹凸構造は,われわれの組織(脳のしわ構造や腸のひだ)だけでなく,自然界にも多く見ることができる。ハスの葉やヤモリの足などは微細な凹凸構造が階層的に形づくられている顕著な例であり,そのような構造に由来して撥はっすい水性や吸着能などの機能が発現・増幅している。
 従来,周期的な微細凹凸構造の作製にはトップダウン型のフォトリソグラフィー技術やレーザー加工などが用いられてきた。特殊な装置や多段階プロセスが必要であるといった問題が指摘されていたが,本研究では生物のしわ発生・形態形成過程をヒントにして汎用性のゴム表面に簡便に微細凹凸構造を作製する技術を開発した。細胞表層と内部との力学的なバランス(座屈現象)に基づいて組織が形成していくことに発想を得ている。作製手順として,はじめにポリジメチルシロキサン(PDMS)ゴムを固定して,下からピンで押し込み,ゴムを3 次元的に伸張する。この状態を維持したまま酸素プラズマ処理を行う。この時,表面には内部よりも硬いシリカ層ができる。最後にピンを下げていき,ゴムを初期状態へと戻していく。見た目にはCD(コンパクトディスク)そのもののように仕上がる(図1)。興味深いことに,周囲は同心円状のストライプ構造(CDの溝のように周期構造に反映した光の干渉により虹色に見えていた!)となるが,中心部分は押し込む高さ(伸張率)を変えることで,“へリングボーン”と呼ばれるジグザグ構造から“ 脳しわ様構造(図2)”に至る多彩な微細構造となる。このしわ空間をテンプレートとして用いると,スピンコーティングにより微粒子をしわの中に入れることができる(図3)。しわの特性空間波長や振幅,粒径をおのおの組み合わせることで微粒子を意のままに配列できる。無論,配列できるのは微粒子だけでなく,細胞やDNAなどもしわ方向に応じた培養・配向制御が可能となる。
 しわ形成を利用した微細凹凸構造作製法は,バイオミメティック系の新しいソフト成形加工技術である。2 層の弾性率や伸張方向,伸張率を適宜変えることでさまざまなパターニングが可能となる。金属蒸着によっても同じ原理で微細構造を作製できる。広範な材料を精密に配列・配置できるだけでなく,機能性分子を化学修飾することで,複雑な凹凸構造に反映した超撥水性基板や高感度センサー構築へと展開できる。導電性高分子や光学特性を有する粒子と組み合わせることで,電気・電子材料分野にも貢献でき,新しいフレキシブル材料創製の基盤技術として幅広く期待される。

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