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光で金属~半導体転移をする金属酸化物を発見! ― 金属酸化物で初めて室温光相転移を実現,夢の次世代光記録材料へ ―東京大学 大越慎一

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 光相転移材料および光相変化材料の研究は,学術的にも産業的にも重要な課題の一つである。現在市場で使用されているDVDやブルーレイディスクなどには,光相変化材料として,カルコゲン(例:ゲルマニウム・アンチモン・テルル)などが用いられているが,高価で希少な元素から成るという点がある。最近われわれは,光照射により金属状態と半導体状態の間を室温で行ったり来たりできる新種の金属酸化物(ラムダ型 – 五酸化三チタン:λ-Ti3O5)を発見した。室温で光誘起相転移を示す金属酸化物は,この物質が世界で初めてである。この物質はチタン原子と酸素原子のみからなる単純な物質で,レアメタルなどを含まないため非常に安価で環境に優しい物質であり,次世代の超高密度光記録材料として有望である。
 ラムダ型 – 五酸化三チタンは,逆ミセル法(界面活性剤により油層中にできた数nmの水滴中で反応を進行させる方法)とゾル – ゲル法(化学的にシリカを前駆体微粒子に被覆させる方法)を組み合わせた化学的ナノ微粒子合成法により得られる。この物質は,既報のTi3O5のいずれの結晶構造とも異なっていたため,この相をラムダ型 – 五酸化三チタンと名付けた。また,市販されている光触媒用のアナターゼ型TiO2ナノ粒子を水素気流下で焼成するだけでも,このラムダ型 – 五酸化三チタンを得られることが分かっている。
ラムダ型 – 五酸化三チタンは,金属的な性質を示す黒色の物質で,室温で緑色レーザー光(波長=532nm)あるいは紫外線レーザー光(355nm)を照射すると,ラムダ型からベータ型 – 五酸化三チタン(β-Ti3O5)(従来から知られている五酸化三チタンの茶色い結晶相で半導体的な性質を示す)へと光相転移を示す(図1)。一方,青色レーザー光(波長410nm)を照射すると,逆相転移を起こしてラムダ型に戻る。観測されたラムダ型 – 五酸化三チタンの光誘起金属 – 半導体転移は,エネルギー的に準安定な状態にあるラムダ型と隠れた真の安定相であるベータ型との間の光による相転移現象によることが熱力学的理論計算より明らかとなっている。
 今回発見されたラムダ型 – 五酸化三チタンは,現在使用されているDVDやブルーレイなどの光記録メディアにおける実用的な光書き込み動作条件(動作温度,短波長光によるデータの書き込み,適切なレーザー強度しきい値)を満たしている。また,経済的コストおよび量産の両面から工業的にも有望である。なお,本研究は,NEDO「循環社会構築型光触媒産業創成プロジェクト」(総括:東京大学大学院工学系研究科 橋本 和仁 教授)の一環として,化学専攻の所 裕子 研究員,角渕 由英 大学院生,生井 飛鳥 大学院生,箱江 史吉 大学院生らと共同で行われた。
 本研究は,S. Ohkoshi et al.: “Synthesis of a metal oxide with a room-temperature photoreversible phase transition,” Nature Chemistry, 2, 539(2010)に掲載されるとともに,Nature Chemistryの“News & Views”およびNature日本版の特集記事などに取り上げられた。

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