【重要】技術情報誌『O plus E』休刊のお知らせ

「先端」レーザーマーキングミヤチテクノス(株) 三浦栄朗

  • 説明文
  • 写真
 レーザーマーキングは,ロゴや製品,生産者の情報,シリアル番号,管理情報が含まれる2次元コード等を,対象物に見やすく描くことが重要である。見やすいマーキングは視認性が良好と評価される。ところが,模造品の防止目的でマークを入れる場合や,製品のデザイン上の制約のために,簡単には見えない方がよい場合があり,肉眼では判別できない小さなサイズのマーキングを実施することがある。
 弊社(ミヤチテクノス株式会社)で展示会にレーザー加工装置を出展する際に,小さな文字のマーキングも可能であることをアピールするために,何にマーキングをしたらよいのか検討をした。ステープラー(ホッチキス)の芯にマーキングをした例をたまに見かけるが,そのサイズは意外と大きく,一本の幅が0.5mmほどもあり,小ささをアピールするには今ひとつである。また,たまに見かけるためインパクトが小さいとの説が大勢を占め,他のもっとインパクトがある物を探すこととなった。そこで,あり得なそうな物にマーキングをするのがよかろうとのことで,カッターの刃へのマーキングにトライした。表題の「先端」マーキングは,先端技術によるマーキングと,刃の先端へのマーキングを掛けてある。
 シングルモードのレーザー光はよく知られているように,波長程度にまで集光することが可能であり,SHGレーザー(波長0.532μm)を使用すれば0.5μm程度にまで集光が可能である。しかしながら,その場合は焦点深度がほとんどないためワークの凹凸が許されず,またミラーによるスキャニングができないことから,文字や2次元コードを実用的にマーキングするには適さない。SHGレーザーを搭載したスキャナー式のレーザーマーキング装置は,通常15~100μmのビーム径で,50~300mm程度の範囲のマーキングが可能である。集光するビーム径を細くするためには,集光レンズに入射するビーム径を大きくし,集光レンズの焦点距離を短くする必要があるが,その結果スキャン可能な範囲が狭くなってしまう。今回,光学系を最適化することで,5μm以下の集光ビーム径で1mmφ程度のスキャンエリアを実現することができ,「先端」マーキングが可能となった。
 写真は,マーキングした刃先をレーザー共焦点顕微鏡で観察したものである。刃の先端が丸くなっていることが分かる。文字の大きさはおおよそ30μmで,ワークに凹凸がなければ,さらに半分程度のサイズでのマーキングが可能である。マーキングされた数字の2008は出展した展示会の開催年で,既に2年前の事例であり,もはや最先端とは言えないかもしれない。次の機会があれば「最先端」(針の先?)のマーキングにチャレンジしたい。

一枚の写真 新着もっと見る

蓄電池発火の画像診断~安全な次世代蓄電池の普及に向けて~
蓄電池発火の画像診断~安全な次世代蓄電池の普及に向けて~...(11/25) 神戸大学 数理・データサイエンスセンター/株式会社Integral Geometry Science 木村 建次郎
空間選択的にバンドギャップ構造を制御する
空間選択的にバンドギャップ構造を制御する...(9/25) 中国浙江大学 孙轲,谭德志,邱建荣
人間重心検知疲労評価システム
人間重心検知疲労評価システム...(7/25) 東京海洋大学 流通情報工学部門 渡邉 豊
「スペクトル超解像」による分光分析の高精度化
「スペクトル超解像」による分光分析の高精度化...(5/25) 名古屋大学 未来材料・システム研究所 原田 俊太
サンゴがもつ緑色蛍光タンパク質の働きが明らかに
サンゴがもつ緑色蛍光タンパク質の働きが明らかに...(3/25) 琉球大学 熱帯生物圏研究センター 高橋 俊一
海鳥目線で捉えた海洋ゴミ汚染
海鳥目線で捉えた海洋ゴミ汚染...(1/25) 国立極地研究所 西澤 文吾

本誌にて好評連載中

一枚の写真もっと見る