セミナーレポート
産業ロボットの知能化と知能ロボット(株)三次元メディア/立命館大学 徐 剛
本記事は、画像センシング展2017にて開催された招待講演を記事化したものになります。
水平分業から垂直統合の知能ロボットメーカーへ
知能ピッキングロボットに必要な技術要素としては,まず3次元形状計測があります。FAでは鏡面反射の強い金属物をはじめ,黒い樹脂,半透明のものなどがあり,こういったものに対しても3次元形状計測ができる必要があります。そのうえで,どこにあり,どの姿勢に置かれているかという3次元認識をする必要があります。そこでは認識の安定性や精度,高速性が重要になります。また,衝突回避や,ロボットアームとハンドのアプローチ経路探索の要素も求められます。私たちは2011年3月に世界初の本格的3次元ロボットビジョンセンサー「TVS」をリリースしました。本格的と呼んでいるのは,どんな形であっても同じものを見つけてくれるという意味からです。2012年にはTVS2.0を,2014年にはTVS3.0をリリースしました。それまでは輪郭を使った3次元認識でしたが,TVS3.0は輪郭と点群を併用した3次元認識ができるようになりました。三次元メディアの組織は,開発部と営業部に分かれています。営業といってもただ売るだけではなく,お客さまのところで製品の使い方を教え,ロボットシステムをお客さまと一緒に立ち上げる技術営業です。お客さまの声は開発にフィードバックし,次のバージョンにつなげていきます。ベンチャーは技術があるのが当たり前ですが,それだけでなく,事業も一定の成長をしてきています。国内の3次元ロボットビジョン市場で,当社は約6割のシェアを占めています。TVSシリーズの販売台数は約200台。ユーザーとしては,大手自動車メーカーをはじめ,自動車部品メーカー,電機,制御メーカーなど約100社です。
今,私たちがやっているビジネスモデルは,水平分業になります。TVSでは,目と脳の部分だけをつくっていました。しかし,それだけでは意味がありません。目と脳とアーム,ハンドをすべて揃え統合して初めてお客さまのところで動くようになります。統合する部分は,これまでは大手メーカーの生産技術部門やロボットSIの会社が担ってきました。しかし,統合には別の技術課題があり,簡単にはいきません。三次元メディアはその難しいところを自らやっていこうと考えました。垂直統合して,この知能ロボットそのものをつくり,販売していくことにしたのです。
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(株)三次元メディア 取締役代表執行役社長/立命館大学 情報理工学部 教授 徐 剛
1983年 中国から大阪大学に留学。1989年 博士後期課程を修了,工学博士。1989年~1990年 ATRにて奨励研究員。1990年~1996年 大阪大学基礎工学部助手・講師。1996年 立命館大学理工学部助教授。2001年 同教授。2004年 同情報理工学部教授。2000年12月 株式会社三次元メディアを設立・社長就任。その間,米国ハーバード大学ロボット研究所,マイクロソフト中国研究所,モトローラ豪州研究所,東京大学にて客員研究員。2012年 第5回ロボット大賞・中小企業庁長官賞を受賞。2015年 第13回産学官連携功労者表彰・経済産業大臣賞を受賞。2017年 Japan Venture Awards・中小機構理事長賞を受賞。