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フェムト秒レーザーを使って毛細血管の三次元構造を再現名古屋大学 新井史人

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 疾患治療の術前計画構築や練習,医療機器開発において,さまざまな生体モデルが用いられている。中でも血管の形を物理的に再現した透明な血管モデルは,血管内治療をはじめとする医療機器開発やその評価において,その有用性が認められている。血管モデルはコンピューター上に構築されたシミュレーターと異なり,医療機器を直接評価できることが大きな特色となっており,近年需要が増している。
 われわれはこれまで,積層造形で作製した三次元WAXモデルを用い,個人情報に基づくシリコン樹脂製三次元血管モデルを作成した。しかし,WAXが脆ぜいせい性材料であるため,小口径血管モデルを作製することは難しい。そこで,より精密なモデルの実現を目指して,三次元マスク露光を用いて,細動脈・毛細血管モデルの作製を行った。図1に示すように,円形断面を有する細動脈・毛細血管モデルを従来の血管モデルに接続することで,循環型モデルを作製した。しかし,生体の構造は極めて複雑であり,従来のマスク露光だけでは生体モデルを忠実に再現することは難しい。
 そこでわれわれは,より精密な生体モデルの実現を目指し,三次元の循環型毛細血管モデルを作製するために,フェムト秒レーザーの二光子吸収による露光方法を利用した。この方法では,レーザーの集光位置付近でのみ二光子吸収による造形が可能であり,高精細に血管形状を作製することが可能である。しかし,大きな領域の露光は困難である。血管モデルの評価には,モデルに液体を導入するための大きなサイズの導入流路も必要である。そこで,従来のマスク露光とフェムト秒露光を併用した新しい露光法「Femtosecond Laser and Mask Hybrid Exposure:FMEx」を開発した。フォトレジストを露光してモールドを加工し,これをシリコン樹脂に転写して,フォトレジストを除去することで図2に示すような三次元Y 字分岐毛細血管モデルを作製し,液体を循環することに成功した。
 本手法を用いることで,立体的に交差し,重なりあうような複雑な毛細血管モデルを作製することが可能である。FMExを用いれば,このような微細な領域に液体を流して還流させることが容易に実現できる。提案手法の実用的な優位性はこの点にあるといえる。今後は,複雑な分岐形状を有する毛細血管形状を再現していくことで,動物実験代替システムや各種医療機器の開発・評価などに貢献する。

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