セミナーレポート

触覚情報をカメラでとらえる立命館大学 理工学部 ロボティクス学科 教授 下ノ村 和弘

本記事は、国際画像機器展2021にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。

複合センシングとセンサー形状のバリエーション

 複数の異なる種類の触覚情報や,異なるモダリティの情報を同時にセンシングする複合センシングへの展開も進んでいます。1つ目は,力計測と接触対象物の位置・姿勢を同時に取るものです。反射膜方式にマーカー変位による力計測(垂直力・せん断力)を行う構造を付加することで実現します。2つ目は,接触と温度情報です。マーカー変位方式において,マーカーを配置する柔軟部の形成時に,熱により変形する材料を混ぜることで,接触位置と温度情報を同時に取得します。3つ目は,接触情報と近接情報です。導光板方式において,透明な導光板を通してセンサー面に接触前の対象物を計測します。位置・姿勢と力の複合センシングの例として,私たちは触覚情報に基づいて,ボルトを目標の穴に挿入することを考えました。反射膜方式とマーカー変位方式を組み合わせることで,ボルトのハンド内での位置・姿勢と,ボルト先端に働く力を同時にセンシングするのを可能にしました。
 触覚画像センサーでは,センサー形状のバリエーションが作りやすいという特長があります。平面だけでなく,鏡を用い薄型,もしくは円筒状にすることも可能です。円筒型センサーでは,円筒状のセンサー面全周の触覚情報を取得でき,ロボットアームのリンク部などに適しています。私たちはローラ型センサーを開発しています。センサー面をローラ状にし,対象面を転がすことで,広い範囲を連続的にセンシングできます。現在は食品検査への応用に力を入れており,その1つとして曲面状の反射膜型センサーを用いたエビ殻検出があります。センサー面を曲面状にし,対象物表面を滑らせ,殻剥き生エビの表面に取り残された殻を検出するのです。
 また,カメラのバリエーションとして,イベントカメラを採用することで,触覚情報を高い時間分解能で取得することが可能になります。触覚画像センサーの展望として,グリッパやロボットハンドへの組み込み,触覚を画像情報に変換する方式の開発,画像からの接触情報の抽出方法,物体操作や検査作業などへの応用が考えられます。

立命館大学 理工学部 ロボティクス学科 教授 下ノ村 和弘

大阪大学 大学院 工学研究科 電子工学専攻博士後期課程修了。博士(工学).2009年立命館大学 理工学部 ロボティクス学科准教授。2018年より同教授。画像センシング技術とロボティクス応用に関する研究に従事。

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