セミナーレポート

触覚情報をカメラでとらえる立命館大学 理工学部 ロボティクス学科 教授 下ノ村 和弘

本記事は、国際画像機器展2021にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。

典型的なセンサー構造

 最近,カメラを用いた触覚画像センサーの研究が世界中で活発になっています。典型的なセンサー構造としては,「導光板方式」,「マーカー変位方式」,「反射膜方式」などがあります。
 「導光板方式」は1980年代から考えられました。導光板(透明なアクリル板など)に対象物が接触すると,接触部から光が漏れ,この散乱光をカメラでとらえることで,接触した場所を検出します。触ったところが光るので,接触部分の検出に適しています。導光板に対象物が直接接触する方法と,柔軟材料で作られたカバーを介して接触する方法とがあります。私たちの研究室では,導光板方式のセンサー例として,アクリル板を使用し,導光板内には近赤外光を照射します。複眼カメラを用いて可視光画像と近赤外画像を同時に取得し,接触が起こった場所や形を高い分解能で得ることができるようになっています。
 「マーカー変位方式」は,透明な柔軟材料のブロック内部にマーカーを埋め込んだもので,接触により柔軟材料部に力が加わり変形すると,内部のマーカー位置が変化します。このマーカー変位をカメラでとらえることで,柔軟部材の変形を推定します。力計測,特に,せん断方向の計測に適しています。原理としては,各マーカーの初期位置からの変化や連続時刻間の変化から,接触位置や力などを推定します。マーカー変位方式は,基本的には計測点数がマーカーの数で決まります。研究例では,直径0.5 mmほどの小さな粒を多数埋め込み,画像の小領域ごとにオプティカルフローを求めることで,多数の計測点(361点)を実現しているものがあります。
 「反射膜方式」は,透明な柔軟材料のシート表面を薄い反射膜でコーティングし,接触した対象物の表面形状に応じた反射膜側の柔軟部表面の変形に照明を当てることで陰影像を作ります。この反射膜の裏側からカメラでとらえることで,表面の変形を画像化します。対象物表面の微細な凹凸構造の検出に適していて,側方からセンサー面に平行な照明光を当てると,微細な凹凸もよく可視化できます。

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立命館大学 理工学部 ロボティクス学科 教授 下ノ村 和弘

大阪大学 大学院 工学研究科 電子工学専攻博士後期課程修了。博士(工学).2009年立命館大学 理工学部 ロボティクス学科准教授。2018年より同教授。画像センシング技術とロボティクス応用に関する研究に従事。

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