セミナーレポート

ロボットビジョンの現状と展望~生産・物流から生活支援まで~中京大学 工学部長 橋本 学

本記事は、国際画像機器展2017にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。

物体認識から“機能認識”へ

 物体認識における課題はまだまだありますが,我々は次の課題に向けて,すでに取り組み始めています。一般家庭に生活支援ロボットが入るようになると,機能認識が必要になってきます。我々は「コップにジュースを入れて持ってきて」といった人間の自然な命令を理解し,その要求をかなえてくれるロボットを目指しています。
 これをタスクに分解すると,「ボトルを持ち,ジュースを注ぎ,そしてコップを持つ」ことになります。「ボトルを持つ」をさらに分解すると,画像処理でボトルを見つけ,ボトルのどこを持つかを決め,ボトルを持つ,ことです。そして,コップを見つけ,ジュースを注ぐべき位置を見つける。次いで,ボトルを傾け,ジュースを注ぎ,最後にコップを持ち,人間にコップの取っ手の部分を持たせるように渡します。
 問題は,持つべき位置や注ぐべき位置をどう判断するか,です。情報はすべてその場で動的に取る必要があります。これを「機能」と呼んでいます。日用品は必ず目的を持って「形」が作られています。コップなら飲み物を入れる部分や,取っ手のようなつかむ部分があります。これが「機能属性」です。我々はそれを機械学習の技術を使い,この属性の認識を実現しました。現在,NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のプロジェクトとして,産業技術総合研究所からの業務委託という形で研究を進めています。
 AIには,現在,第三次の波が訪れています。ロボットビジョンという観点で歴史の流れを見ると,1968年に,人工知能の父と言われるマービン・ミンスキー教授がカメラとロボットを使い,ロボットビジョンの研究を行った例があります。その後,50年をかけて,2017年,我々もARCで成果を残すまでの技術ができました。
 この先,解決すべき課題として,私は大きく分けて6つあると考えています。認識の課題としては,①認識の汎用化・抽象化,②イレギュラー検知。AIとしてのロボットタスクとの連携では,③要求からのブレークダウン,④ロボット動作のための認識。また,関連要素として,⑤センサーで見えるものを増やす,⑥視覚だけに頼らない統合センシング,です。こうした課題の解決に向けて,我々もさらに研究開発を進めていきたいと考えています。

中京大学 工学部長 橋本 学

1987年大阪大学大学院工学研究科前期課程修了。同年三菱電機(株)入社。生産技術研究所,産業システム研究所,先端技術総合研究所にてロボットビジョン,3次元視覚等の研究開発に従事。2008年中京大学 情報理工学部 教授。2013年より同大学 工学部 教授。2017年より同大学 工学部長。博士(工学)。1998年度日本ロボット学会実用化技術賞,2012年度画像センシングシンポジウム優秀学術賞,2015年度精密工学会画像応用技術専門委員会小田原賞,2017年度IWAIT Best Paper Award等受賞。

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