セミナーレポート

時代は今マッシブビジョンへイノインテック研究所 山本 和彦

本記事は、国際画像機器展2011にて開催された特別招待講演 プレインタビューを記事化したものになります。

すそ野を広げることが先決

山本:ここで示した例は文字認識のアルゴリズムや翻訳プログラム自体が最適というわけではありません。でも,それらをうまく組み合わせて,新たな市場を開拓するという手法や意気込みが大切だと思います。パターン認識や画像処理に対するコンピューター技術がどうこうというように大上段に振りかぶるのではなく,ネット上のパッケージを組み合わせて課題解決をしていくようなアプローチが,今,必要になっているということなのです。
 画像処理のアルゴリズムなどは,延々と何十年も多くの方々が築き上げてきていますね。だから,そこでさらにそれらに打ち勝つようなものを作り出そうとすると,学生の間の2?3年では無理です。ところが,既存のパッケージを組み合わせて作ってみろと言うと頑張りますよね。それで「できました!」,「おお,すごいじゃないか」という風に今は,大学でやっているのです。学会発表だけを目指すようなものではなく,「もっとオタクな人や違うフィールドの人たちに画像技術を解放したらどうですか」という提案なのです。

聞き手:画像処理プログラムのオープン化の流れですね。

山本:そのために,プログラムを作るのは玄人ですが,素人が分かるプログラムにしていきます。素人なり,セミ玄人なり,そういう人たちを巻き込んで,興味を持って画像の市場へどんどん入ってこれるような枠組みを用意すれば,膨大なアプリケーションフィールドを抱え込むことができるだろうと考えています。今までは,専門家が作っていたがゆえにロングテールの部分を切らざるを得なかったのです。大企業にしてみれば,100億円の市場がないと開発できないと言いますが,市場の形が変化している時に,相変わらず同じ手法を続けていけるか疑問なのです。

聞き手:そうなると,今までの大企業のビジネスモデルは成り立たなくなりますね。

山本:確かにそう言えば,大企業は「これはもうからない市場になる」と逃げてしまうかもしれません。だけど私は,それは違うと思います。むしろ,すそ野が広いかどうかが問題です。素人や入門者がある程度の市場を作ります。だけど,彼らじゃできないことはいっぱいありますから,そうするとそれより専門家がさらに上のレベルの開発を行う。そういう意味で,実力の各階層によって中小企業から大企業までがかかわりながら,一方でちょっとしたアップグレードならば末端ユーザーもかかわれるような,そうした市場の枠組みを考えています。

聞き手:「画像処理にはいろいろなチャンスがある」と言われた割には,今は大きなマーケットを見失ってしまったような沈滞感がありますね。

山本:そこが問題なのです。もともと大きな市場を目指して作られてきた画像の世界の枠組みですが,単一の市場を追っかけている限り,閉塞感にさいなまれることになります。そうじゃなくて,一つ一つは小さいが,多様性に対処できる点が逆に期待されるのです。規模が小さい時にコストパフォーマンスが合わなくなるという問題は,今回提示する三つの手法で解いていくのです。

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イノインテック研究所 山本 和彦

1971年,東京電機大学 大学院修士修了。同年,通産省 電子技術総合研究所(電総研)入所。1979年,米国メリーランド大学 客員研究員。1988年,電総研 知能情報部画像研究室室長。1992年,筑波大学 連携大学院教授(併任)。1995年,岐阜大学 工学部応用情報学科教授。2010年,岐阜大学名誉教授・フェロー,イノインテック研究所所長。現在に至る。IAPRフェロー,電子情報通信学会フェロー。工学博士。日本科学技術情報センター丹羽学術賞,第6回画像センシングシンポジウム(SSII2000)論文賞受賞。

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