セミナーレポート

医療画像へのAI応用とその未来大阪公立大学 健康科学イノベーションセンター スマートライフサイエンスラボ 特任准教授 植田 大樹

本記事は、国際画像機器展2021にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。

AIと医療者の認知の違いと,AI応用の未来

 当大学病院の平均の動脈瘤の大きさは4 mmくらいですが,AIモデルでは5 mm以上で見逃しの感度が上がっています。大きな動脈瘤は,放射線科医なら見逃すことはありませんが,AIは見逃していたのです。逆に,AIを使い,放射線科医に読影してもらうと,新しく動脈瘤の好発部位でないところのものを見つけることができました。放射線科医は好発部位に力を入れて読影しますので,AIを使うことで好発部位でないところの発見率を高め,支援していることがわかりました。そういう意味では,かなり相性が良いと言えます。
 AIと人間は見ているところが違います。物自体の概念を円で表すと,概念の捉え方としては,人間とAIが同じ円で一致することが望ましいと言えます。しかし,現実には,人間の捉えている領域とAIが捉えている領域は一致しません。そのズレが生じている領域の1つに,医師ががんと判断したものをAIでは正常とした領域があります。これは,“医療安全への懸念”になりますから,この評価はAIの領域認証のキモとなってくるところでもあります。一方,医師が正常と判断したものをAIではがんとした領域があります。先ほどの動脈瘤の好発部位でないところの発見にあたります。これは,“未知・真実への挑戦”を意味します。人間とAIの答えが違うことによって,こうした2つの面白い領域が生まれていると言えます。例えば,MRA(磁気共鳴血管画像)での脳動脈瘤検出や胸部レントゲンでの肺癌検出は,両者の共通タスクで一番大きな円の領域になります。一方で,AIが可能とする胸部レントゲンから心機能の推定や弁膜症の推定,マンモグラフィからのレセプター発現予測などは人間には到底できないタスクです。
 AI時代の未来の応用の姿として,医師の役割は,両者に共通する大きな円の部分である代替可能な領域はAIに任せ,AIに不得手な領域をカバーし,AIにしかできない新たな可能性の領域を追求することが求められています。私たちのラボでは「Implement World Health 世界の健康を実装する」をコンセプトに,論文に留まらず,医療の現場で実際に使われるところまでこだわって追求していきたいと考えています。

大阪公立大学 健康科学イノベーションセンター スマートライフサイエンスラボ 特任准教授 植田 大樹

2021年3月 大阪市立大学大学院医学研究科放射線診断学・IVR学 博士課程修了 2021年4月-現在 大阪市立大学 健康科学イノベーションセンター 特任准教授 主な業績として,RSNA(放射線科世界最大の学会)The Best of Radiology受賞(2019年),Eirl Aneurysm PMDA認証(日本初のDeep Learningの医療機器認証)(2019年),日本医学放射線学会 最優秀賞(2020年),Eirl Chest Nodule PMDA認証(2020年)

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