セミナーレポート

画像を見つめて50年カーネギーメロン大学 ワイタカー記念全学教授 金出 武雄

本記事は、国際画像機器展2021にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。

画像には大きなリダンダンシーがある

 こんなふうに,50年で画像について学んだことが多くあります。その1つ「画像には大きな冗長度がある」というのを話しましょう。白黒画像で1つの画素に8ビット,256種の明るさがあるとすると,10×10の画素の画像には25610×10=10240の可能性があります。これが,いかに大きな数であるか。人類はせいぜい100万年,その間に平均して10億人の人がいたとして,その人たちが,毎日,毎時間,毎分,毎秒,ハイビジョンテレビを見ていたとしても,見たはずの10×10の画像は1030にしかなりません。人の視覚の解像度はもっとある,人はもっといたとしても0の数はそんなに増えません。「いまだかつて人類はすべての10×10の画像を見たことがない」,これを「金出の定理」というべきでしょうか。要するに,画像には本来,構造の冗長度があるはずで,それを使うことができれば面白いことができます。高解像度の画像を与えられたときに,これを低解像度の画像にするのは簡単ですが,逆操作は難しいです。しかし,実は可能なのです。われわれは約5,000人の顔のトレーニングデータを使い,解像度によってどう変化するかを調べ,低解像度の画像を高解像度の画像にするのを2000年に可能にしました。要するにSuper Resolutionですが,われわれはこれを本来できないはずだができるという意味で「hallucination」と名づけました。
 画像には実世界の情報が符号化されて含まれているという考え方が重要です。画像の冗長度を利用すれば,一見できなさそうに見えても画像に符号化されている情報を取り出すことができます。しかし,エンコードされていない情報は取り出しようがありません。企業の製品検査などの開発で,「人が目視検査をしている→カメラで画像を撮って学習させれば同じことができるはず」という理屈でやっているのをよく見かけます。たいていうまくいきません。人の検査員は光源との角度を変える,物を透かすなどで様々なデータ・情報を使います。画像を特定の条件で撮ってしまえば,多くの場合対応するような情報は入っていません。私は,これを「絵を撮ったらもう手遅れ」と言っています。絵を撮る前に考えることが重要なのです。
 さらに,「イメージングとディスプレイのデュアリティ」も,私が学んだことの1つです。それで雨粒に光を当てない,したがってそれが見えないヘッドライトを開発しました。普通,「落ちてくる雨粒の位置と将来の軌跡を予測して」などと難しいことを考えますが,それをせずに雨粒に光を当てないようにできることを示しました。
 現在の画像技術はあらゆる知的知能システムの中心であることは間違いありません。技術的には,高能力なセンサー,ハイパフォーマンスなコンピューター,そして高速高容量の通信技術の3つが揃ったパーフェクト・ストーム状態で,良い考えさえあれば何でもできる時代です。良いシナリオを使って,良い問題を解いて,良いインパクトを与えてください。良い問題は世の中にいっぱいあります。それを解いて,世の中に貢献していただけることを期待しています。

カーネギーメロン大学 ワイタカー記念全学教授 金出 武雄

現在,米国カーネギーメロン大学ワイタカー記念全学教授,および京都大学高等研究院招聘特別教授。1974年京都大学で工学博士号取得後,同助手・助教授を経て,1980年に米国カーネギーメロン大学に移る。1992年から2001年にカーネギーメロン大学ロボット研究所の所長を務めた。コンピュータービジョン,ロボット工学,人工知能の分野でさまざまな研究を手がけ,400以上の論文を発表し,引用数15万3千件以上,全世界計算機科学者のTOP10のh-index 161をもつ。
2019年 文化功労者,2016年 京都賞先端技術部門,2008年 フランクリン財団メダル・バウアー賞,2011年 アメリカ計算機学会と全米人工知能学会アレン・ニューウェル賞,2017年 米国電気電子学会(IEEE) Founders Medal,2018年 アルメニア国家賞グローバルITアワード,2007年 計算機視覚研究におけるAzriel Rosenfeld生涯業績賞など受賞。日本人最年少でアメリカ工学アカデミー特別会員,アメリカ芸術科学アカデミー会員,日本学士院会員。

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