セミナーレポート

遠赤外線カメラと可視カメラを利用した悪条件下における画像取得産業技術総合研究所 東京工業大学 田中 正行

本記事は、国際画像機器展2018にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。

>> OplusE 2019年5・6月号(第467号)記事掲載 <<


画像融合のためのハードウェアアライメント

 可視光線の波長領域は380~780 nm,遠赤外線の波長領域は8~15 μmになります。可視光線はわれわれが見える領域で,いろいろなカメラが用意されています。しかし,可視カメラは霧や霞に弱く,夜は光源がないと見えません。遠赤外線カメラは,最近値段が安くなり,温度が見える,霧を透過するなどの特徴から注目されています。遠赤外線カメラは温度を感知するので,夜など光源がなくても身体から発する体温により人や動物を見つけることができます。ただし,人が認識するのが困難,解像度が低い,歪みが大きいという欠点があります。
 ImPACT(革新的研究開発推進プログラム)のタフ・ロボティクス・チャレンジというプロジェクト中でも,遠赤外線カメラの特徴を利用した研究を行っています。遠隔操作ロボットによるオブジェクトの取り出し実験で,煙が出ていて肉眼では見えない車内の品物を,遠赤外線カメラによって煙透過映像を得ることができるものです。
 最近は,遠赤外線カメラと可視カメラを組み合わせることで目的を達成する試みが行われています。そこでは,画像合成が重要な技術の1つになってきます。マルチモーダルな画像を合成することで,可視画像の認識の容易さと,遠赤外線画像の豊富な情報提示を実現でき,重要な情報の迅速な認識が可能になります。
 画像合成技術にはいくつかの要素があります。まず2つのカメラがあるので,カメラ間の位置合わせが必要になります。また,単純に並べると位置が違うため,ソフトウェア的なキャリブレーションや,さらには画像処理も必要です。
 ハードウェアアライメントでは,われわれのシステムは,シリコンのビームスプリッターを設置し,遠赤外線を通して可視光は反射するという特性を利用しました。その結果,通常は遠赤外線も可視も見えますし,対象物の前に煙があるなど悪条件下でも遠赤外線で見ることができます。両方のカメラの情報を融合することで,どちらがいいか選択できます。

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産業技術総合研究所 東京工業大学 田中 正行

2003年 東京工業大学博士課程修了 2003年-2004年 アジレント・テクノロジー株式会社 2004年-2008年 東京工業大学研究員 2008年-2017年 東京工業大学准教授 2013年-2014年 スタンフォード大学客員研究員 2017年-現在 産業技術総合研究所主任研究員

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