セミナーレポート

自動運転をめぐる法整備の最新動向明治大学専門職大学院法務研究科 自動運転社会総合研究所所長 中山 幸二

本記事は、国際画像機器展2018にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。

道路交通法条約の現状と解釈

 道路交通に関するジュネーブ条約は1949年にできたもので,日本も批准し,1964年より国内的効力を発効しています。そこには,車両には運転者がいなければならず,運転者が確実に操縦し,車両の速度を制御していなければならないという条文があります。これが国内法の道路交通法にも対応しています。そのほか,国際的な道路交通条約としては1968年にできたウィーン条約があり,欧州諸国を中心に締結されています。ウィーン条約でもジュネーブ条約とほぼ同じ内容の条文があります。
 これらの条約の改正を,国連の作業部会の中の道路交通安全作業部会(WP1)で検討しています。道路運送車両法との関係では,自動車の装備と機能の国際基準を検討する作業部会(WP29)があります。ウィーン条約については,2014年にWP1で改正案が採択されました。従来の条文はそのままに,国際協定に適合しているとき,あるいは運転者によるオーバーライドまたはスイッチオフが可能であるときは,運転者が運転しているものとみなすことで,システムへの運転委託を許容しました。
 一方,ジュネーブ条約では,2015年にWP1で改正案が採択されましたが,改正に必要な賛成回答数が3分の2に達せず,結果的に否決されました。欧州はすでに先を行き,米国はわが道を行って州の法律で認めています。中国は両条約とも加盟しておらず,条約の縛りがなく,すぐに改正できます。このままいくと,自動運転を認めていないジュネーブ条約に縛られる日本だけがおいていかれる状況になっていきます。
 私は,ウィーン条約を国際的なデファクトスタンダードと位置づけ,システム許容と解して,技術開発と国内法の整備を進めるのが得策であると考え,「条約と法律の戦略的解釈論」を展開しています。2018年10月には,ウィーン条約とジュネーブ条約を同等に置き,両条約につき自動運転を推進する「勧告」がWP1から示されました。これにより,ジュネーブ条約の改正を待つことなく,この「勧告」に基づき,レベル3~4の自動運転を許容する国内法の整備が可能になります。警察庁は道路交通法の改正に静観のスタンスを取っていますが,今はまさに千載一遇のチャンスだと私は考えています。

明治大学専門職大学院法務研究科 自動運転社会総合研究所所長 中山 幸二

1979年 早稲田大学法学部卒・1986年同大学院法学研究科博士課程単位取得満期退学 1986年 神奈川大学法学部専任講師,助教授,教授を経て,明治大学法学部教授 2004年より大学院法務研究科専任教授(現在に至る)
日本民事訴訟法学会理事,仲裁ADR法学会理事・事務局長,法科大学院協会事務局長を歴任

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