セミナーレポート
ICT×ロボット農業に必要な画像技術北海道大学大学院農学研究院教授 野口 伸
本記事は、国際画像機器展2015にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。
ICTによる次世代の農業
ICTによる次世代の農業では,ICTで情報を収集し,農業に活かすということになります。米国ではかなり普及が進んでいます。セスナ機などを使いリモートセンシングを行い,成育や土壌の状態を地図化し,農家に提供しています。これにより,例えば生育の悪いところだけ肥料を施用することが可能になります。トータルな資材投入量を減らすことができ,コスト削減や環境問題への貢献にもつながります。日本でもおいしいお米を作るためにはタンパク含有量のコントロールが必要になり,そのときに平準化を進める上でこの技術が活かせます。ちなみに,米国中西部での農業におけるリモートセンシングの普及率は約4割に達しています。リモートセンシングは,農産物の品質管理,収穫予測,収穫適期の判定,加工施設の稼働スケジューリングなどに利用されています。リモートセンシングは,センシング高度により,サテライト,ドローン,グランドビークルの3つに分けられます。サテライトは広域の認識に優れていますが,タイムリーな情報収集が難しく,解像度の問題,気象の影響などもあります。それらを解消するのがドローンです。また,車両系にカメラを搭載したグランドビークルは,作業をしながらリアルタイムな処理が可能で,高い解像度が得られます。ただし,車両の速度は遅いので時間がかかるという欠点があります。サテライトを活用した例としては,米粒タンパク含有量マップの作成があります。ドローンの例としては,土壌腐食含量マップや土壌含水率マップ,小麦成長状態マップの作成などがあります。また,グランドビークルでは,固定点からのモニターによる作物生育状態の観測があります。
ICT農業では,スポット防除,可変施肥,害虫発生予察などのスマート農業への利用が期待されています。さらに,衛星・低層のリモートセンシングデータなど,様々な時空間データを統合することで,匠の技,営農ノウハウを抽出することが可能になります。

北海道大学大学院農学研究院教授 野口 伸
専門:生物環境情報学,農業ロボット工学1990年,北海道大学大学院農学研究科博士課程修了。1990-1996年,北海道大学農学部助手。1997-2003年,北海道大学大学院農学研究科助教授。2004-現在,北海道大学大学院農学研究院教授。