セミナーレポート

ニュートンの夢がついに実現 ~多波長干渉画像処理が拓く新たなナノ計測の世界東レエンジニアリング(株) 北川 克一

本記事は、国際画像機器展2012にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。

透明膜測定,多波長ワンショット測定装置を実用化

 その後,2002年に実用化したのが透明膜計測です。表面に透明膜がある場合,表面と裏面の干渉信号が重畳し,誤差が出て,正確な表面形状測定ができませんでした。特に半導体やFPD(フラットパネルディスプレイ)の製造工程で,その解決に対するニーズが大きくありました。そのために,2002年に表裏干渉ピーク2本が目で見える厚膜測定のためにKFアルゴリズム,2006年には干渉ピークが重畳して1本にしか見えない薄膜測定対応のNFアルゴリズムを開発しました。それを商品化した薄膜対応表面形状測定装置「SP-700」は世界初の実用機で,最小膜厚50nmから測ることができます。
 そして次に取り組んだのがワンショット干渉計測による高速化・耐振動性の実現です。従来の干渉計測法は測定に時間がかかる,振動に弱い,移動物体は測定できないなどの問題がありました。それを解決するために,多くの研究者がさまざまな方法に挑戦していますが,私たちが取り組んだのがワンショット法です。そこで,干渉光学系の参照面を傾け,縞画像を解析して,高さを求めるキャリア縞導入方式を使おうと考えました。しかし,高周波成分が無くなる,計算時間がかかる,測定レンジが狭いという問題点があり,それを解決するために,新しい位相計算アルゴリズム(局所モデル適合法=LMF法)と多波長干渉法を組み合わせました。開発したLMF法で1波長ワンショット法を実験したところ,50nmの段差が1枚の画像で高速で撮像できるようになりました。測定レンジの拡大もさまざまな研究者が取り組んでいますが,私たちはワンショットで多波長画像を撮ることに挑戦しました。その結果,市販の安価なLED照明装置を使って,3波長同時撮像システムを開発することができました。
 それを使って,1μmの段差を測り,その撮像に成功したので,さらなる測定レンジ拡大のための波長の最適化に取り組みました。その中で,ハロゲン光源3台と光ファイバーを用いた3波長混合照明法を開発しましたが,さらによい方法がないかと研究した結果,1枚のマルチバンドパスフィルター(MBPF)による3波長照明系を開発し,照明輝度アップによる1000分の1秒のシャッター速度と,コストダウンを実現しました。そして,それを使った8μmの段差が測定できる3波長ワンショット測定装置「MW-500」を開発し,インクジェット方式カラーフィルター(IJCF)基板の自動膜厚測定に活用しています。本測定装置は市販の3軸直交ロボットに測定光学系を搭載したもので,特別な防振装置は要りません。

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東レエンジニアリング(株) 北川 克一

1964年東京大学計数工学科卒、同年東レ(株)に入社。1989年より画像処理・レーザ光学を応用した半導体およびFPD用検査機器の研究開発に従事。2000年より東レエンジニアリング(株)勤務、現在に至る。計測自動制御学会より技術賞(2001年度)受賞。ViEW2003にて小田原賞受賞。手島記念財団発明賞受賞(2004)。精密工学会より技術賞(2011年度)受賞。2011年博士(情報理工学;東京大学)。計測自動制御学会認定計測制御エンジニア。

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