セミナーレポート
高速画像処理の新展開東京大学工学部/情報理工学系研究科研究科長 石川 正俊
本記事は、画像センシング展2017にて開催された招待講演を記事化したものになります。
高速ビジョンとヒューマンインターフェース
研究室では,人間の眼をはるかに凌ぐ超高速の画像センシングを軸として,様々な分野において新しい応用を切り拓く実践的な高速ビジョンの研究を進めています。1993年から汎用ビジョンチップを開発。最近では,ソニーと共同で1000fpsに対応した汎用積層型ビジョンチップを開発しました。
また,ヒューマンインターフェースの分野では,1994年にジェスチャー認識を発表しました。わずか16×16ピクセルですが,1000fpsにすることで,人間の動作の認識ができるようになります。例えば,自分の手をカメラで撮り,ゲームの中のアバターの手として実現しようとする場合,カメラ入力,コンピューター入力,画像処理など全体で150ms~200msの遅延が生じてしまいます。それらをすべて速くすることで,30msの遅延に抑える高速・低遅延ジェスチャーUIを実現しています。この展開としては,空中映像を手で操作できるAIRR Tabletがあります。3次元空間内の対象を瞬時かつ低遅延で検出する高速ジェスチャー認識技術を用いて, 空中映像を高速に操作することを可能にしたものです。
また,画面の中心に対象がくるように自動的にパン・チルト方向を制御する1msオートパン・チルト技術を開発しています。卓球のラリーのような高速な球の対象でも,1000fpsの高速画像処理によって,あたかも画面中央に球が止まっているかのような映像を記録することができます。
そして,東京エレクトロンデバイスと,プロジェクタのフレームレートを高速化する共同研究を行い,1000fpsで8ビット階調の映像を,最少遅延3msで投影できる高速プロジェクタを開発。移動体へのプロジェクションマッピングを実現した高速プロジェクタを「DynaFlash」として実用化しました。
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東京大学工学部/情報理工学系研究科研究科長 石川 正俊
1979年 東京大学大学院工学系研究科修士修了。通商産業省工業技術院製品科学研究所を経て,1989年 東京大学工学部計数工学科助教授,現在,情報理工学系研究科研究科長及び創造情報学専攻教授。この間,2002年より2006年まで,東京大学総長特任補佐,副学長,理事・副学長を歴任。高速画像処理とその応用システムの研究に従事。2011年 紫綬褒章受章。