画像センシングの最前線

三次元計測梅崎 太造/服部 公央亮/鷲見 典克

3. 実サンプルに対する計測例

 三次元計測の実利用に向けた取り組みとして,我々がこれまでに実施した三次元計測の適用例を手法別に紹介する.

3.1. アクティブステレオ法
 前述の通り,アクティブステレオ法では,比較的広範囲を高精度に計測可能である.これらの手法を用いて,バネの三次元計測・車の凹み検査・航空機のファスナ取り付け検査・ボディスキャナなどを実現している.

3.1.1. バネ計測
 自動車の中においても機能/安全上特に重要な部品であるバネを対象として,スリット光投影法による三次元計測システムを構築した.回転ステージにより全周をスキャンすることで,バネ全体の形状を計測することに成功した(図2(a)).さらに,徐変ばねでの外形計測に適したフィッティング方法である区分的最小二乗法を適用することで,バネ端部を除けば繰り返し精度10[μm]という高精度な計測を実現した(図2(b)).
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図2.バネ計測

3.1.2. 車体の凹み検査
アクティブステレオ法による三次元計測を用いて,カーシェアリングをターゲットとした車体の凹みに対する自動検出システムを開発した.三次元計測器には,カメラとプロジェクタを用いた(図3(a)).計測手法には,パターン投影法の1つである空間コード符号化法(グレイコード使用)と繰り返しパターン投影法である位相シフト法を併用した.事前に取得した三次元計測データと車返却時の三次元計測結果の差異を凹みとして検出する(図3(b)).
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図3.車体の三次元計測

3.1.3. 航空機のファスナ取り付け検査
 プロジェクタとカメラを用いたアクティブステレオ法(空間コード符号化法+位相シフト法)による三次元計測装置をロボットアームに搭載して,ファスナ装着状態の自動検査システムを(株)エアロと共に開発した(図4(a))[6].現在,検査で使用している「パネル面を基準としたファスナ面の深さ・傾きが規定範囲内であるか」という指標について,三次元計測を用いて判定可能なことを確認した(図4(b)(c)).ファスナは金属材料であるが鏡面では無く,ざらついた表面状態であるため,対象と計測器を適切な位置関係を保つことでアクティブステレオ法を適用できた.
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図4.航空機ファスナの三次元計測

3.1.4. ボディスキャナ
 エステティックサロンの効果を定量化・可視化するため,プロジェクタとカメラを用いた安価なボディスキャナを開発した(図5(a)(b)).計測手法としては,アクティブステレオ法(空間コード符号化法+位相シフト法)を使用した.さらに,形状データに対して変形を行うことでダイエットシミュレーション結果を提示するシステムを開発した(図5(c)(d)).前後から2組のプロジェクタ-カメラユニットで撮影した上で補間をすることで,全周の計測を実現している.人肌については,特に問題なく計測が可能である.
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図5.エステティックサロン用ボディスキャナ

3.1.5. 黒髪の計測
 位相シフト法は投影パターンの明暗により生じる輝度値の差を利用して計測を行うが,被写体の反射率が低い場合には十分な輝度値の差が得られないため,計測できない領域が発生する.例えば,アジア人の黒髪は毛髪の色とツヤにより計測が大変難しい.そこで,我々はカラーカメラとカラーの投光パターンを用いて,ダイナミックレンジを拡大して計測する手法を提案した.実験の結果,ダイナミックレンジを拡大することで,ツヤのある黒髪を計測することに成功している(図6)[7].
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図6.アクティブステレオによる黒髪の計測

3.2. 干渉縞法
 光の干渉を用いた計測法では,鏡面あるいは透明物体をナノオーダーで計測可能である.ここでは,我々がこれまでに試みた試料に対する計測結果の一部を紹介する.

3.2.1. 反射物体の三次元計測
プロジェクタを用いた計測法では,鏡面反射を持つ物体の計測が困難であるが,レーザ光による干渉縞を用いた計測法では,鏡面反射物体の計測が可能となる.主に,マイケルソン干渉計やフィゾー干渉計に基づく計測装置が一般的であり,これらの計測装置では対物レンズなどの光学系を適切に設計することで2,000倍程度まで拡大可能であり,マイクロチップやSi基板の凹凸のようなミクロン単位の微小構造物体も計測できる(図7~9).計測手法には,フーリエ変換法や並列位相シフトアレイを用いることによりワンショットでも物体の三次元形状を計測できるため,防振台などの特殊な計測環境を必要とせず高精度な計測を実現することも可能である [8,9].
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図7.デジタルホログラフィ計測器

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図8.マイクロチップの計測例

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図9.Si基板の計測例

3.2.2. 透明物体の三次元計測
透明物体の計測法として,マッハツェンダー干渉計に基づく計測装置が一般的である.透明物体をリアルタイムで計測可能な手法であることから,レンズなどの精密加工された透明材料やアメーバなどの微生物を直接傷つけることなく観察可能である(図10―12).我々は,(株)マクシス・シントー,(社)名古屋環未来研究所,名古屋大学 Maturana研究室と共同で,水処理施設における水中の微生物観察を目的とした透過型のデジタルホログラフィ顕微鏡を開発した.レーザ光と白色のLED照明を毎フレーム切り替えて撮影することにより,通常の顕微鏡による二次元像とボリュームを含めた三次元像を同時に観察可能なシステムを構築した.透明な微生物は,通常の顕微鏡による二次元画像では観察が困難である場合も多いが,干渉縞計測を適用することで試料の体積変化がリアルタイムに三次元観察できる.
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図10.レンズの計測例

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図11.Hek293細胞の計測例

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図12.水中の活性汚泥微生物の計測例
<次ページへ続く>

梅崎 太造

名古屋工業大学大学院,東京大学大学院

服部 公央亮

中部大学


鷲見 典克

名古屋工業大学大学院

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