色褪せない蛍光タンパク質－細胞微細構造やウイルスの定量的観察を可能にする技術－理化学研究所，東北大学，北里大学，花王株式会社

　理化学研究所，東北大学，北里大学，花王株式会社の研究グループは，明るく極めて褪色しにくい蛍光タンパク質「StayGold」を開発し，生細胞で細胞小器官の微細構造の動態を速く長く解析する定量的観察法を確立した。また，StayGoldとVHH抗体の融合タンパク質を作製し，固定感染細胞における新型コロナウイルスのスパイクタンパク質の詳細な分布を明らかにした。
　今回，同グループは，「タマクラゲ」の遺伝子発現解析データをもとに，野生型タマクラゲの緑色蛍光タンパク質を遺伝子クローニングし，明るく極めて褪色しにくい変異体StayGoldを創出した。小胞体，ミトコンドリア，微小管などの細胞小器官をStayGoldで蛍光標識し，従来の蛍光タンパク質では褪色のために解析できなかった動的構造変化を明らかにした。また，StayGoldを抗SARS-CoV-2スパイクタンパク質VHH抗体に連結することで，感染細胞内でウイルス粒子が成熟する経路を捉えることに成功した。
　今後，褪色による制限を取り払うことで，蛍光観察の時空間の幅を飛躍的に拡張し，定量性を求める創薬開発研究に貢献すると期待される。