わずか1分子の厚さに電荷を閉じ込めた有機2次元ホールガスを実現東京大学，産業技術総合研究所，物質・材料研究機構

　東京大学，産業技術総合研究所，物質・材料研究機構の研究グループは，極めて高純度かつ欠陥のない有機半導体単結晶の1分子層（厚さ4 nm）に高密度にキャリアを注入することで2次元ホールガスが形成され，さらに4分子当たり1電荷に相当する高密度のホールを誘起したところ，「絶縁体―金属転移」を実験的に観測することに成功したと発表した。
　不純物のない絶縁性の固体物質に高密度に電荷を注入すると，絶縁体から金属に転移する。しかし，有機半導体における「絶縁体―金属転移」は，20年以上もの間，実験的に実証されていなかった。今回使用した有機半導体薄膜は量産性やコストに優れる印刷プロセスによって作製しているため，これまでより簡便に2次元電子系を実現することが可能となり，電子相転移の基礎研究に加え，高速電子デバイスや量子エレクトロニクスデバイスへの応用研究が加速することが期待される。