長波長の可視光に応答する半導体の新合成手法を開拓九州大学,東京工業大学,名古屋大学

 太陽光の有効利用の観点から,広い波長範囲の可視光を利用できる光機能材料が求められている。可視光応答化の手段の1つとして,2価の鉛やスズ(Pb²⁺,Sn²⁺)などのローンペア電子を有する元素の利用が検討されてきた。特に鉛フリーの観点から,スズをベースとした可視光応答型半導体材料が光触媒やペロブスカイト太陽電池の分野で盛んに研究されているが,ローンペア電子を含むスズ化合物はこれまで酸化物やハロゲン化物に限られていた。
 九州大学,東京工業大学,名古屋大学の研究グループは,良好な電子伝導性をもちつつも元来可視光を吸収しないペロブスカイト型スズ酸バリウム(BaSnO₃)をホスト材料として用い,酸素欠陥存在下でヒドリド(H⁻)をドープし,結晶内にSn²⁺を生じさせることによって,長波長の可視光に応答するスズ含有ペロブスカイト型酸水素化物半導体を合成した。この材料はこれまでに報告されているSn²⁺を鍵とした化合物よりも長波長の可視光を吸収・応答する。また,ヒドリド(H⁻)ドープによるバンド制御は容易でないため,これまでヒドリド(H⁻)を含有した光機能材料の報告例はほとんどなかった。
 本研究によって示された,酸化物ホストへのヒドリド(H⁻)導入や酸素欠陥と複合化させることによる可視光吸収材料の合成手法は,無毒で安価な鉛フリー光吸収材料合成のための新たな設計戦略となることが期待される。

ニュース 新着もっと見る

書籍案内購入はこちら

干渉計を辿る

著者
市原 裕
価格
3,000円(税抜)

第11・光の鉛筆

著者
鶴田匡夫(ニコン)
価格
5,500円(税抜)

コンピュータビジョン 最先端ガイド6

著者
藤代一成,高橋成雄,竹島由里子,金谷健一,日野英逸,村田 昇,岡谷貴之,斎藤真樹
価格
1,905円(税抜)

Excelでできる光学設計

著者
中島 洋
価格
3,909円円(税抜)

シミュレーションで見る光学現象 第2版

著者
Masud Mansuripur
訳:辻内 順平
価格
6,000円(税抜)

レンズ光学入門

著者
渋谷 眞人
価格
4,000円(税抜)