超伝導検出器を使った全固体ワンチップの中性子高速イメージング装置を開発大阪府立大学,高エネルギー加速器研究機構,日本原子力研究開発機構,情報通信研究機構,産業技術総合研究所 研究グループ

 大阪府立大学,高エネルギー加速器研究機構,日本原子力研究開発機構,情報通信研究機構,産業技術総合研究所の研究グループは,超伝導検出器を使った全固体ワンチップの中性子高速イメージング装置の開発に成功したと発表した。
 中性子は電荷を持たないため,物質中の電子では散乱されず,原子核によってのみ散乱または吸収されるため,多くの物質に対し強い透過性がある。また,X線では見えにくい水素原子などの軽元素に対しても感度をもつ特徴もある。このことから,中性子による透過像撮影は非破壊検査として役立つが,撮像の空間分解能は,顕微鏡ほど高性能はでなかった。近年の大強度中性子源の発達により,高い空間分解能を持つ中性子顕微鏡の開発が必要となったため,高い空間分解能をめざした中性子検出器システムの開発が競って行なわれている。
 ヘリウム3(3He),リチウム6(6 Li),ホウ素10(10 B)などの特定の元素には中性子が吸収されやすいことを利用すれば,中性子は検出できる。そこで全固体の超伝導 検出器を開発し,コンパクトな中性子高速イメージングシステムを完成した。
 開発したシステムでは,電磁波が4つの電極に到達する時間差を計測して,X座標とY座標を計算できる。この時間差計測に時間デジタル変換機を用いた。大強度陽子加速器施設J-PARCのBL10で実証実験を行い,時間分解能は1ナノ秒,中性子イメージングの空間分解能は22 μmを達成し,数十MHzと高速で動作することがわかった。
 この研究の中性子検出器は,シンチレータ方式の検出器に対して,ほかの放射線(ガンマ線,X線など)にほとんど感度をもたない。また,検出器内で,中性子イベントが複数回あっても検出が可能な特長がある。今後,この超伝導中性子検出器システムが高分解能の中性子による透過像の撮像に利用されることが期待される。

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