薄型で伸縮自在なスキンディスプレイの開発に成功東京大学,大日本印刷(株) 研究グループ

 東京大学と大日本印刷(株)の研究グループは,薄型で伸縮自在なスキンディスプレイの製造に成功し,スキンセンサーで計測された心電波形の動画を皮膚上に貼り付けたスキンディスプレイに表示できるセンサーシステムを開発したと発表した。
 超高齢社会の到来を迎えた日本では,高度に発展した情報通信技術を駆使した健康管理システムが期待されている。特に,「いつでも,どこでも,誰もが簡単に,正確に生体情報をモニタリングし,その情報にスムーズにアクセスできる技術」が求められている。近年,ウェアラブルデバイスで生体情報をモニタリングし,スマートフォンやタブレット端末に表示することができるようになった。しかし,入院中の高齢者や幼児でも,計測から情報表示までの一連の流れを自然にして,アクセシビリティを高める新たな技術が求められている。
 本研究では,薄型で伸縮自在なスキンディスプレイの製造に成功し,スキンセンサーで計測された心電波形の動画を皮膚上に貼り付けたスキンディスプレイに表示することができるようになった。このスキンディスプレイは,16×24個(画素数:384)のマイクロ発光ダイオード(マイクロLED)が薄いゴムシートに等間隔で埋め込まれており,全体の厚みは約1 mmで,繰り返し45%伸縮させても電気的・機械的特性が損なわれず,薄型・軽量で伸縮自在なため,皮膚に直接貼り付けても人の動きを妨げることがなく,装着時の負担が大幅に低減されている。最も伸ばした状態と最も縮めた状態の解像度は,それぞれで4 mmと2.4 mmである。実効的な表示面積は,それぞれ64 mm×96 mmと38 mm×58 mmである。マイクロLEDの大きさは1 mm×0.5 mm,発光波長は630 nm(赤色),駆動電圧は2 Vである。パッシ ブマトリクス方式で駆動され,表示スピードは60 Hz,最大消費電力は13.8 mWである。
 本スキンディスプレイの特長は,独自の伸縮性ハイブリッド電子実装技術によって,マイクロLEDのような硬い電子部品と伸縮性のある配線が混載したゴムシートを伸ばしても壊れないところにある。これまで硬い素材と柔らかい素材の接合部分に大きな応力が集中するため,すぐに故障していたが,本研究では,この応力の集中を避ける構造を採用した結果,機械的な耐久性を格段に向上することができた。また,産業界で実績のある量産性に優れた電子実装方法で製造されているため,早期の実用化と将来の低コスト化が期待される。具体的には,伸縮性の配線としてはスクリーン印刷法による銀配線が使われ,マイクロLEDの実装には一般的なマウンタとはんだペーストが使われている。
 スキンディスプレイは直接皮膚に貼り付けて,皮膚呼吸できるナノメッシュ電極と無線モジュールを組み合わせたスキンセンサーで計測した心電波形の動画をディスプレイに表示する。この心電波形は,スマートフォンで受信でき,リアルタイムでスマートフォンの画面で波形を確認したり,クラウドやメモリに保存したりすることができる。今回は,メモリに保存した心電波形の動画をスキンディスプレイに表示した。これまでナノメッシュ電極を活用して,温度,圧力,筋電を計測していたが,今回,ナノメッシュ電極で心電波形の計測ができるようになった。
 皮膚貼り付け型のスキンセンサーとスキンディスプレイを一体化したシステムによって,生体信号の計測から情報の表示まで一連の流れをユーザーにとって自然な形で負担なく実現できるようになる。

ニュース 新着もっと見る

書籍案内購入はこちら

干渉計を辿る

著者
市原 裕
価格
3,000円(税抜)

第11・光の鉛筆

著者
鶴田匡夫(ニコン)
価格
5,500円(税抜)

コンピュータビジョン 最先端ガイド6

著者
藤代一成,高橋成雄,竹島由里子,金谷健一,日野英逸,村田 昇,岡谷貴之,斎藤真樹
価格
1,905円(税抜)

Excelでできる光学設計

著者
中島 洋
価格
3,909円円(税抜)

シミュレーションで見る光学現象 第2版

著者
Masud Mansuripur
訳:辻内 順平
価格
6,000円(税抜)

レンズ光学入門

著者
渋谷 眞人
価格
4,000円(税抜)