渦巻く光が自然界にも存在分子科学研究所,室蘭工業大学,高エネルギー加速器研究機構,九州シンクロトロン光研究センター,産業技術総合研究所,名古屋大学 研究グループ
これまで,光渦は,実験室で特殊な光学素子を用いてレーザー光から人工的に合成,それを使って様々な研究が進められている一方,このような奇妙な光が自然現象で生みだされることはないというのがこれまでの常識だった。円軌道を描く電子からの放射過程は,磁場の中を運動する電子によるサイクロトロン放射を始め,自然界で重要となる様々な放射現象の基礎となるものでよく知られた放射現象であるが,光渦という奇妙な光を生み出すという,100年以上誰も気がつかなかった秘密を明らかにしたものである。
今回,円軌道放射という自然界で極めて一般的にみられる現象によって光渦が生成されることが示され,光渦は自然界の様々な場所で普遍的に存在するものであることが明らかになった。この現象を利用することで,全く新しい光渦発生装置が開発できる可能性がある。また,これまで,情報通信,ナノテクノロジー,イメージングといった分野で進められてきた光渦の利用が,光のあらゆる波長域で展開できるようになり,物質科学などより幅広い領域で新しい研究ツールをもたらすことが期待される。