テラヘルツ光照射による高次構造変化を実現理化学研究所,大阪大学 研究グループ

 理化学研究所と大阪大学の研究グループは,高強度の「テラヘルツ(THz)光」の照射により,高分子の高次構造を変化させることに成功したと発表した。
 THz光は,電波と光の中間の周波数の電磁波で,分子間に作用する水素結合や,高分子の高次構造の振動運動の周波数に相当するため,高強度THz光の照射は高分子の高次構造やその運動状態を変化させる可能性がある一方,プラスチック,ゴム,セルロース,タンパク質などの高分子は,たとえ同じ分子でも高次構造によって物性や機能が異なる。そのため,高次構造の変化をTHz光によって誘起できれば,高分子の機能や物性を変える新しい手段が生まれると考えられている。
 同グループは,ポリヒドロキシ酪酸のクロロホルム溶液からポリマー膜を作製する際,大阪大学の自由電子レーザーによって発生した高強度のTHzパルス光を照射したところ,ポリマー膜はTHz光照射時と非照射時では,全く異なる結晶構造を持つことが分かった。高分子中に結晶が占める割合で,高分子の融点や硬さなどの物性を決めるパラメーターである「結晶化度」を比較した結果,THz光を照射しなかったポリマー膜に比べて,照射したポリマー膜では結晶化度が20%増加していた。ポリマーの結晶化度は,通常熱によって変化するが,今回の実験では,温度上昇を1℃以下に抑えた条件でTHz光を照射しているため,THz光と物質の相互作用によりポリマーの高次構造が変化した可能性が高いと考えられる。
 今後,今回の高次構造変化のメカニズムの解明が進めば,光による機能性材料の開発や機能制御など,高分子を対象とした新たなテクノロジーの確立につながると期 待される。

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