光で鉄の原子核を一気に加速日本原子力研究開発機構,神戸大学,九州大学,大阪大学,ロシア合同高温研究所
これまで,強いレーザー光を物質に照射すると,物質中の原子は,瞬時にプラズマ化し,電子を全く持たない「裸」イオン状態,もしくは「裸」イオンに近い多価イオン状態になると同時に,プラズマ中に生じる強い電場により,一気に加速されて物質から引き出されると考えられてきたが,実験的にこのことを示せていなかった。しかし,今回,ポリイミド膜を用いた新型検出器と精密なX線分光を組み合わせることにより,大型の重元素加速器と同じように,光で「裸」の鉄原子核を加速して取り出すことができることを実験的に明らかにした。
現在,重元素を加速するのには大きな加速器が必要であるが,この技術により,装置の小型化が図れ,さらに,天体現象中(例えば超新星爆発)のみで創り出されるような極めて短時間で壊れる重元素を,従来の加速器技術を駆使した元素合成手法により実験室で模擬的に生成し,本手法によって短時間で効率良く取り出すことができるようになれば,今までわからなかった元素合成過程の解明や新しい重元素の発見をもたらすと期待されている。