レーザー光で加速したイオン速度を整えて個数を10倍増やす量子科学技術研究開発機構(QST),九州大学,高エネルギー加速器研究機構,住友重機械工業,山形大学
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量子科学技術研究開発機構(QST)などのグループは、レーザーによって生成した高速のイオンをがん治療装置用に制御する技術を実証した。
現在、既存の加速器をコンパクトなレーザー加速装置に置き換えることで治療装置の大幅な小型化を目指す「量子メスプロジェクト」が産学官連携にて進めてられている。
重粒子線を用いたがん治療では、速度の揃ったイオンを治療に必要数生成することが求められるが、加速器と違いレーザー加速で生成したイオンは速度が不ぞろいである。導入に適したイオン集団内の個数を増やすため、原型機にイオンの速度を目標値に整える「位相回転空胴」装置の導入により、目標速度を持つイオン集団内の個数を最大で10倍程度増大させ、10ヘルツ運転すれば量子メスに必要な個数(109個)に到達する見込みが得られた。また、この制御にて、非常に短い時間(10億分の1秒、1ナノ秒)に多数のイオン(1平方センチメートルあたり1000万個)が集められた事がリアルタイムで観測できた。
この観測により、レーザーを照射するたびに生成されるイオン集団は、従来の加速器よりも非常に短い時間においてイオン個数が100倍以上高密度であることが実証された。今回開発の技術は量子メスだけでなく、短い時間に大量にイオンや中性子が衝突するような原子力材料の脆化過程において時間を追って調査する耐久性評価試験や、材料科学や生命科学などでの応用が期待でき、産業応用への可能性も期待できる。










