放射線の種類で変化するEu添加CaF₂結晶の発光特性を発見東北大学
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放射線のエネルギーを光に変換する物質、シンチレータ。その一つ、Eu（ユウロピウム）添加CaF₂結晶にα線を照射すると、X線を照射したときより長い波長の光が多く発生することを世界で初めて発見。これにより、波長で放射線の種類を識別できる可能性がある。
シンチレータは放射線のエネルギーを光へ変換する物質で、医療やセキュリティなどで利用される。Eu添加CaF₂（フッ化カルシウム）結晶は、高い発光量（約2万光子/MeV）を示し、優れた光学的透明性と化学的安定性を備える。
従来、シンチレータの発光波長と放射線の種類は無関係と考えられたが、今回、CaF₂結晶に対しユウロピウムの添加濃度を変え、α線とX線をそれぞれ照射して発光の色（波長）と強さを詳しく調べた。その結果、Eu²⁺による波長約420 nmの発光と、Eu³⁺による波長590-695 nmの発光の比が、照射する放射線の種類によって異なることを発見した。また、同一試料においてEu²⁺発光を一定とした場合、Eu³⁺発光は、α線照射時にX線照射時の約2倍となることが確認された。これは光の色の違いにより放射線の種類を識別できる可能性を示唆し、例えば、原子力施設の解体現場など複雑な環境での線量測定に応用できる可能性があると考えられる。
この成果により、新しい粒子識別法および次世代の放射線検出技術の開発につながると期待される。今後、レンズなど光学系との組み合わせにより、放射線が通った飛跡をカラーで記録する技術を開発、α線やX線などの粒子種を色で識別できる手法の確立を目指す。
