画像センシングの最前線

ドローンのビジネス活用に関する展望小林啓倫

2. ドローン活用が期待される業務

 具体的にどのようなドローン活用が検討されているのか、簡単に整理しておこう。ここでは使い方に注目して、「飛ぶ」「運ぶ」「情報を集める」という大きく3つに分けて考えてみたい(図1参照)。
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図1. ドローンの主な活用法

 まず「飛ぶ」だが、ドローンなのだから飛んで当たり前だろうと思われるかもしれない。その通りなのだが、ここでは純粋に「飛ぶ」という機能だけを活用した使い道という意味だ。  たとえば最近、エンターテイメント目的でドローンを使うという例が現れている。2014年には、日本のelevenplayというダンスカンパニーが、人間とドローンが同じ舞台上で踊るというパフォーマンスを披露した。従来のラジコンヘリであれば、危険すぎて考えられなかった行為だが、小型で飛行を自在に制御できるドローンが登場したことで、こうしたアイデアも実現可能になっている。それをさらに大がかりにしたものとして、オランダでは「ドローンサーカス」を開催しようという企画まで進められているほどだ。  また世界各地において、「ドローンレース」の開催が本格化している。文字通り複数のドローンを決められたコースで飛ばし、順位を競うという競技だ。ドローンに搭載されたカメラから見るレース風景は、まるでF1レースを車載カメラから見るような迫力であり、多くのファンを集めつつある。  次に「運ぶ」だが、これはいわゆる「ドローン配送」を想像すれば分かりやすいだろう。2013年にアマゾンが構想をぶち上げたことで話題となったドローン配送だが、たとえば「離島に医薬品を届ける」など範囲を限定した配送では、既に多くの企業が実証実験を成功させている。またスイスのスイスポストや、フィンランドのポスティ、シンガポールのシングポストなど、各地で郵便サービスを手がける事業者がドローン導入に乗り出している。まだまだ技術面でクリアすべき課題の多いドローン配送だが、問題は「できるかどうか」ではなく「いつ事業化されるか」になりつつある。  さらにいま、さまざまなモノをドローンに運ばせる検討が進んでいる。広告が描かれた垂れ幕から、救急救命用のAED(自動体外式除細動器)、さらには無線中継用の機器(空からアクセスポイントを提供する)に至るまで、その発想は止まるところを知らない。  最後の「情報を集める」は、ドローンのビジネス活用という点で最も関心を集めている領域だ。通常の光学カメラから、熱を検知するサーモグラフィー、測量に使われるレーザースキャナーなど、さまざまな情報収集機器をドローンに搭載し、空からデータを集めるのである。どのようなセンサーを搭載するのか、どのように飛行させるのか、集めたデータをどう分析・活用するのかの組み合わせで、無数の用途が生まれようとしている。  最もシンプルなのが、ドローンに光学カメラを搭載して空撮するという用途だ。単純とはいえ、これまでクレーンを使うしかなかった低高度からの俯瞰撮影が簡単にできるとあって、多くの目的に活用されている。観光プロモーション用に景勝地の眺めを撮影したり、大邸宅を宣伝するために不動産業者が物件を撮影したり、あるいはそうした邸宅の屋根が損傷した場合、保険査定員が状況確認のためにドローンを飛ばしたりといった例が既に始まっているのである。  特にこの分野で注目されているのが、高度なデータ分析による用途の拡大だ。たとえば一般的な光学カメラで大量の画像を撮影し、それを特殊なアルゴリズムで処理することで、地形の3Dモデルデータをつくるといったことが可能になっている。これまでは複数の人間を使い、何日もかけて測量するしかなかった地形データの把握を、ドローンがごく短期間・低コストで行えるわけだ。さらにそうしたデータを定期的に集めて比較することで、工事などの作業がどのように進んだか、またどの程度の土砂が掘り出されたかといった情報まで正確にはじき出せるようになっている。  最後の例が象徴しているように、「ドローンがどんな用途に使えるか」という問いへの答えは、技術の進歩や業務上の工夫によって急速に拡大しつつある。実際、冒頭で紹介したようなドローン市場予測は、最近のものになればなるほど、新たに考案された用途を取り込んで数字が大きくなる傾向にある。いまから10年後、全世界で数千億円、あるいは数兆円以上の市場が誕生している可能性もゼロではない。 <次ページへ続く>

小林啓倫

 株式会社日立コンサルティング シニアコンサルタント。1973年東京生まれ。筑波大学大学院修了後、国内システムエンジニアリング企業にてITコンサルタントとしてキャリアを積む。米バブソン大学にてMBAを取得後、外資系コンサルティング企業、国内ベンチャー企業を経て、2005年から現職。著書に『ドローン・ビジネスの衝撃』(朝日新聞出版)、『今こそ読みたいマクルーハン』(マイナビ出版)、訳書に『ソーシャル物理学』(草思社)、『データ・アナリティクス3.0』(日経BP)など多数。

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