画像センシングの最前線

三次元計測の原理と光の性質広島市立大学 日浦 慎作

2.三次元計測の原理と分類

 三次元計測には多くの手法があるが,それらは従来,能動的計測(アクティブ計測)と受動的計測(パッシブ計測)の2つにまず大別されることが多かった.能動的計測はセンサ側から,距離計測のために特にデザインされた光を被写体へ照射する手法であり,それに対し受動的計測は太陽光や屋内照明など,特に制御されていない既存の照明光を用いて対象を撮影し形状を求める手法である.それに対し筆者は近年,より計測原理に近い観点から以下の2つに大別することを提唱している.
   a. 光の直進性を用いる方法
   b. 光速を用いる方法
 なぜこの2種類の方法が広く用いられているのだろうか?当然のことながら,光は極めて直進性が高く,かつ気圧や気温の変化に対し光速は変化しにくいからであるが,実はこれらは同じことである.光は波であり,空間中で光速が一定であれば波面が平行のまま光が伝播するから,光が直進するのである.もっとも蜃気楼や陽炎のように,空気中に大きな温度変化があればそれにより部分的に光速が変化し,同時に光の直進性が乱されるが,温度や気圧に対する光速の変化率は音速に比べて約3桁小さく,土木分野等における精密な計測を除けば,これによる誤差を勘案する必要はほとんどない.
 しかしそれぞれの三次元計測法は,それらが依拠するこれら2つのどちらかの原理に当然ながら支配されており,それぞれの原理が持つ特有の性質を共有している. <次ページへ続く>

広島市立大学 日浦 慎作

1972年生.1993年大阪大学基礎工学部制御工学科飛び級中退,1997年同大大学院博士課程短期修了.同年京都大学リサーチアソシエイト,1999年大阪大学大学院基礎工学研究科助手,2003年同助教授.2010年広島市立大学大学院情報科学研究科教授.2008-2009年マサチューセッツ工科大学メディアラボ客員准教授.三次元空間の画像計測と反射現象・表面質感の解析,コンピュテーショナルフォトグラフィ等の研究に従事.1993年電気関係学会関西支部連合大会奨励賞,2000年画像センシングシンポジウム優秀論文賞,2010年情報処理学会山下記念研究賞,2012年MIRU優秀論文賞等受賞.電子情報通信学会,情報処理学会,日本バーチャルリアリティ学会各会員.博士(工学).

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