セミナーレポート

VR2.0の世界 -AR/VR技術の現在過去未来東京大学大学院 情報理工学系研究科 教授 廣瀬 通孝

本記事は、ビジュアルメディアExpo2018にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。

VRで何ができるのか

 では,VRで何ができるのでしょうか。1つ目には「体験すること」です。例えば,光に近いスピードで移動したときに空間が歪むという相対性理論を,VRでは体感して理解できます。これは様々な医療の現場でも使えます。実はVRセンターができたときに,一番興味を持っていただいたのは医学部の先生方で,臨床講義に使えるからでした。また,パイロットの養成をするのに,実機でやるのは大変なので,シミュレーターを使っていますが,VRでさらにそのコストを下げることができます。すでに,JALではパイロットと整備士の訓練にVRを使おうとしています。技能伝承や防災教育などにも使えます。日本はAIやIoTを使い,データベース化するのはあちこちで行われていますが,取ったデータをどの様に戻すのかが抜けています。そこが重要なのです。
 VRでできることの2つ目は,「空間を超える」ことです。仮想空間を広帯域ネットワークを介して共有すれば,例えば東京にいながらにして,あたかもニューヨークにいるような臨場感通信が体験できます。テレプレゼンス(遠隔臨場感)技術によって,空間を超えての就労も可能になります。そのとき必要になるのが,遠方の世界を体験できる「臨場感」と,遠方の世界に自分を感じさせる「存在感」を同時に担保することです。VRでは,遠隔臨場感が持てるので,交通技術と代替性があります。2018年にANAが仮想旅行プロジェクトを始めました。さらに言えば,ARは空間だけでなく時間を超え,過去を追体験することも可能です。
 VRの先端的な研究に「煽情的な鏡」というものがあります。これはいわばバーチャルな鏡で,そこに映った顔を笑顔にしたり悲しい顔にしたりするものです。笑顔を見せられるとポジティブな感情が上昇し,悲しい顔を見せるとネガティブな感情が上昇するのです。ARは,感情に作用することができるのです。これをTV会議などに利用し,参加者の顔を笑顔にすると話が盛り上がり,出てくるアイデアの数も有意に増えるという結果も出ています。
 バーチャルというのは,ユーザーと現実世界との関係に関与する技術で,その間にメディアが入ります。バーチャルで大事なのは本物そっくりであるところもありますが,本物といかに違うかというところが興味深いところでもあるのです。

東京大学大学院 情報理工学系研究科 教授 廣瀬 通孝

1982年3月 東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。工学博士。同年東京大学工学部講師,1983年 東京大学工学部助教授,1999年 東京大学大学院工学系研究科教授,東京大学先端科学技術研究センター教授,2006年 東京大学大学院情報理工学系研究科教授,現在に至る。専門はシステム工学,ヒューマン・インタフェース,バーチャル・リアリティ。主な著書に「バーチャル・リアリティ」(産業図書)。総務省情報化月間推進会議議長表彰,東京テクノフォーラムゴールドメダル賞,大川出版賞,など受賞。日本バーチャルリアリティ学会会長,日本機械学会フェロー,産業技術総合研究所研究コーディネータ,情報通信研究機構プログラムコーディネータ等を歴任。

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