セミナーレポート

社会の安心・安全を支える顔認証技術の紹介NEC バイオメトリクス研究所 高橋 巧一

本記事は、国際画像機器展2018にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。

これまでの顔認証の歩み

 顔認証技術の始まりは,東西冷戦の諜報活動に向けたものだと言われています。1964年~65年,顔認証のパイオニアの技術として,マンマシン顔認証システムが生まれました。目と目の間,頭と顎先,口の長さなどを計測することで認証します。当時はコンピューターがなかったため,点自体は人の手で打っていたと言います。その10年後,全自動で顔認証を実現したのが,カーネギーメロン大学の金出武雄先生の研究です。140×204画素,5ビットの顔画像で40個の顔の特徴点を使い認証を行いました。
 1987年,現在の手法の基礎が生まれました。データを集め,統計的な手法によって顔認証するもので,今でいう機械学習です。1993年には顔画像のベンチマークテストが始まりました。現在,NIST(アメリカ国立標準技術研究所)が継続して行っており,このプログラムのおかげで世界的に顔認証技術が格段の進歩を遂げました。1995年には顔認証の商用化が開始されました。2001年の米国同時多発テロ以降,凶悪犯罪,テロ対策が重要視されるようになり,2011年バンクーバースタンレーカップの暴動や,2013年ボストンマラソン爆弾テロ事件などの容疑者特定で顔認証が使われるようになりました。2004年には,世界中でパスポートにICチップが搭載されました。その後,顔認証が町中でも広く使わるようになったことで,顔認証のプライバシー問題が議論されるようになりました。2017年にはスマートフォンに顔認証が搭載され,より身近になりました。
 NECにおける顔認証の取り組みとしては,研究は1989年から始まり,1996年に3次元顔認証技術の研究開発をスタートさせました。2002年に,顔認証技術を使ったNeoFaceを商品化し,2007年に,ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのゲートシステムに導入されました。2009年からはNISTの顔認証のベンチマークテストに参加,2009年以降,参加した年には常に1位を獲得し,特にNISTから「低解像度でも照合できる唯一のベンダー」と評価していただきました。そして,顔認証技術を本格化させるため,2016年に顔認証技術開発センターを設立し,現在では40か国100システム以上の納入実績を築いています。

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NEC バイオメトリクス研究所 高橋 巧一

2015年 慶應義塾大学大学院・理工学研究科にて博士号取得。現在,NEC・バイオメトリクス研究所にて,顔認証の研究開発に従事。

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