セミナーレポート
製造やサービスで期待される新しいロボットに必要なビジョンセンサ産業技術総合研究所 中坊 嘉宏
本記事は、国際画像機器展2015にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。
サービスロボットの国際安全規格
現在,NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)では,生活支援ロボットプロジェクトが立ち上がっています。これは,生活支援ロボットとして産業化が期待されるロボットを対象に,関係者が密接に連携しながら本質安全・機能安全に係る試験を行い,安全性等のデータを取得・蓄積・分析し,安全性検証手法の研究開発を実施するものです。ロボットメーカーが安全の技術を開発する一方,産業技術総合研究所を含む研究機関は試験・認証のスキームをつくる。両者でタッグを組んだプロジェクトです。そして,プロジェクトの中で,参画した2社のロボットが,世界で初めて国際安全規格「ISO13482」の認証を取得しました。 安全規格は,機械安全ではピラミッド型の体系になっています。基本安全規格はISO12100です。その後にグループ規格があり,機械ごとの個別の規格があります。そこには,プレス機械や工作機械,搬送機といったものがあり,その中にサービスロボットが入っています。一方,機能安全規格というものがファミリーとしてあり,それがIEC61508です。ISO12100とIEC61508は電子機器では基本の安全性の考え方になります。 ISO12100には安全とは何かということも書かれています。安全というのはリスクがない状態です。リスクは人に危害を加えるような確率で評価されます。その確率が十分低くなったところが安全です。ゼロがないというところは非常に重要です。ロボットビジョンでもこの確率をどう扱うかが一番難しいところです。また,リスクアセスメントでは,例えば機械が故障したりミスをしたりした場合に,即危険と判断し,止めることができるようなシステムが必要になります。アプリケーションで様々な機能を盛り込み,確実に安全を確保しようとすると,どうしてもコストが高くなってしまいます。一方,安くつくるためには,機能的に絞り込まなければならなくなります。サービス・アプリケーションと,安全,コストの3者はトレードオフの関係で,そこをどうつくっていくかが重要です。<次ページへ続く>

産業技術総合研究所 中坊 嘉宏
2000年 東京大学工学系研究科 石川正俊研究室 博士課程修了。2002年 理化学研究所 バイオミメティックコントロール研究センター研究員。2005年 産業技術総合研究所 知能システム研究部門 安全知能研究グループ。2008年 同ディペンダブルシステム研究グループに組織変更。2013年 同グループ長。2015年 同ロボットイノベーション研究センター ディペンダブルシステム研究チームに組織変更。