セミナーレポート

国際画像セミナー特別招待講演 「高速画像処理とその応用」を聞いて東京大学 石川 正俊, 他

本記事は、国際画像機器展2010にて開催された【特別企画】 最新画像処理 鼎談を記事化したものになります。

「どう使うか」までやって初めて完結する

猿田:今の教育は頭に詰め込むことばかり。「世の中にないものを作りなさい」という教育がありませんね。人はそういう時に頭が一番活性化されるのに。

石川:画像処理をやっている人たちに強く訴えたいのは,画像を理解できただけで画像処理が終わったと思わないで欲しいということです。それをどう使うかが重要です。使う時のことまで考え,それに対する構想を出して,ようやく画像処理は終わるのです。
 よく「エッジ検出ができた」,「オプティカルフローが取れた」という話を耳にしますが,それを使って「ここまでできました」というところまでやらなければ意味がありません。そうすれば,ものすごく新しい分野の開拓につながるかも知れません。

猿田:「あったら楽しくて良い」ようなテーマもありそうですね。

石川:うちの研究室では,ブックフリッピングスキャニングみたいな研究は「できちゃった研究」と呼んでいます。3次元形状が1/1000秒で撮れるという研究を進めていたとき,ある研究員が「形と画像が撮れるのだから,それを元に戻すこともできますね」,「じゃ,スキャンでやってみよう」と話していたら,わずか1か月で装置を作っちゃった。これを学会発表したら,大変な騒ぎになりました。
 学会では「スキャナにはどれくらいの分解能が必要か?」という質問をよく受けましたが,実はそんな簡単な問いにも答えられませんでした。そのくらいスキャンの知識を持っていなかったのです。それでも「できちゃった」(笑)。

猿田:スキャナのスタイルが変わるかもしれませんね。

石川:それをおっしゃっていただくのは大変ありがたいのですが,最初は何も考えていなかったのであまり胸を張って自慢できる状況でもありません。学会発表してから,後付けでいろいろと言い訳を考えました(笑)。「ブレイクスルーってこんなもんだろう」と思いましたね。開発当初は分解能が足りないのではないかと心配していましたが,ふたを開けたら十分であることも分かりました。仮に分解能が足りなければ,カメラを複数台にすれば良いのです。高速処理を使えば境目をキレイに処理することもできます。この研究は現在,大日本印刷と共同で実用化研究を進めています。

司会:本日は石川先生の貴重なご講演の後,さらに業界のご意見番である東レエンジニアリングの北川さん,アイピーエヌの猿田さんという豪華メンバーによる大変興味深い鼎談を直に聞くことができ,大いに触発されました。みなさん,お疲れのところ,長時間のご対談,まことにありがとうございました。

東京大学 石川 正俊, 他

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