セミナーレポート

国際画像セミナー特別招待講演 「高速画像処理とその応用」を聞いて東京大学 石川 正俊, 他

本記事は、国際画像機器展2010にて開催された【特別企画】 最新画像処理 鼎談を記事化したものになります。

アナリシスからシンセシスへ

猿田:画像関連はニューマーケットやニュープロダクトが出てきて良さそうな分野ですが,国内ではあまり出てきませんね。

石川:そうなんですよ。
 うちの学生にいつも言ってるのは,「先輩たちが作ってくれたいい道具がいっぱいあるのだから,それを持って周りの人が考えていないところに行って戦ってこい」ということです。「絶対に勝てる」という確証はないけれど,それでも半分以上はちゃんと勝てます。例えば,ホヤの精子を追跡できる顕微鏡などは,やってみたら世界で初めてのことでした。こんな話が山ほど落ちています。
 こうした研究手法が,欧米の21世紀の科学技術構造論では大切といわれています。ノーベル賞を取る研究はアナリシスタイプで真理探究型です。しかし,そうじゃない科学技術も21世紀では重要になっているのです。いわゆる開拓型ですね。何もないところにどうやって切り込むのか,それが大切なんです。
 そうした例で一番端的なのは,米国のGoogle社ですね。この会社は「世界中を検索できたらいいな」という一言から始まった。あれは日本ではできない事業ですね。せいぜい「Googleがやったからわが社もやってみよう」というレベルの事業が精いっぱいでしょう。

猿田:画像処理のマーケットはどうでしょう?

石川:「画像処理技術が成熟期に入った」と思うのは大間違いです。画像処理技術にはまだたくさんの空白地帯があります。今の画像処理をどうやって改良するかなどは誰かに任せて,空白地帯の画像処理を攻めましょう。
 空白地帯には例えば「時間密度」というテーマがあります。北川さんにはスペクトルや干渉というテーマがおありでしょう。波長にも空白地帯があります。ミリ波やテラヘルツ波などがそうです。こうしたところを手分けして攻めていかなければなりません。さらに,分解能を思い切り上げたらどうなるか,帯域も上の方でどうなるか,カメラを複数台にすると何ができるか…。こんなにやることがあるのだから,みんなで手分けてしてやるべきでしょう。

北川:最近,「日本初のキーテクノロジー」というものが見あたらない気がします。カメラなどの分野でそういうものがあっても良さそうなのに。目新しいものはほとんどが海外からのものですね。高精細であれ,多波長であれ。これは,日本でニーズが減っているということなのかな?

猿田:いや,マーケットはあるはずです。アイディアを持っている人もいます。でも,実現するところまで至っていないのではないでしょうか。

石川:うちの研究室では常に「構想力」というものを大切にしています。理論がある,アイディアがある,デバイスもそこそこ見えてきた。しかし,マーケットで使われる姿を構想できる力が日本人にはちょっと足りないと感じています。
 その理由は,少々乱暴な言い方ですが,高校の理系教育には数学と理科しかないという点に尽きます。これらの教育ではすべてアナリシスの手法が採られています。構想力といったシンセシス(総合,統合)の手法ではありません。
 授業は「問題を解きましょう。これが不思議だと思ってください」という進め方です。そういう手法と構想力は違うものです。「道具はこれです。これで何かを作ってください」という教育が必要です。今の授業で育てられた人がいざ新しいマーケットを作るとなると,「理論はできます。デバイスも作れます」というところまでは良いのですが,「でも,その先どうする?」ということになっちゃう。

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東京大学 石川 正俊, 他

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