セミナーレポート

コンピュテーショナルイメージング概説東京大学 大学院 情報理工学系研究科 准教授 堀﨑 遼一

本記事は、画像センシング展2022にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。

コンピュテーショナルイメージングの研究動向1

 新たな機能のまず第一は,波面符号化です。被写体を撮影する場合,カメラの絞りを広げると,焦点面にはフォーカスが合いますが,それ以外のところはフォーカスが外れます。そこで提唱されたのが,波面符号化です。3次元形状板を挿入することでフォーカス点を散らし,さまざまな距離で同じようなボケ方にします。対象の距離を気にせずに,1つの同じボケ関数を使って対象のボケ回復を行うことができ,鮮明な画像を高速で作ることができます。
 次に,複眼カメラです。TOMBOと呼ばれる複眼カメラの中央には3×3の穴が開いており,そこに小さなレンズが入っています。基本的に,カメラはレンズの焦点距離によって決まります。単眼カメラのように大きなレンズを使うと筐体は厚くなります。一方,TOMBOのような焦点距離の短いレンズをたくさん使うことで,レンズとイメージセンサーとの間の距離を短くすることができ,カメラ全体を薄くすることができます。複眼カメラでは小さい画像がたくさん得られ,各個眼像は違う情報をもつことになります。それらを超解像することで鮮明な画像を再構成します。また,3次元情報を得ることもでき,超解像度処理をすれば,3次元の被写体に対しても高解像度の画像を作ることができます。
 次に,コンプレッシブセンシングです。たくさんの色を撮るための分光イメージングの場合,被写体はXYの空間座標に波長(色)に対応する次元λから構成されます。イメージセンサーはXYの2次元の画像を取得するので,2つの間には次元のギャップがあります。そこで,1つの方法として,それぞれの色に対応するカラーフィルターを用意し,入れ替えながら撮影し,オリジナルのデータキューブを得ることができます。ただし,それぞれの色のカラーフィルターを用意しなければならないので,入れ替えの時間がかかるといった課題があります。こうした課題に対して,コンプレッシブセンシングは非常に有効に働きます。

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東京大学 大学院 情報理工学系研究科 准教授 堀﨑 遼一

2010年 大阪大学 大学院 情報科学研究科 博士後期課程修了
2010年~2020年 大阪大学 大学院情報科学研究科 助教
2017年~2020年 JSTさきがけ(兼任)
2020年~現在 東京大学大学院情報理工学系研究科 准教授

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