セミナーレポート

ニューノーマルにおけるロボットビジョン研究産業技術総合研究所 インダストリアルCPS研究センター 堂前 幸康

本記事は、画像センシング展2021にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。

基本的な作業能力,対話・学習能力の向上

 ロボットの種類には,生産現場では柵の中で物をつかむロボットアームをはじめ,人と対面して隣り合って作業する家庭用ロボット,遠隔で人が操作する遠隔ロボットなどがあります。今後はどれかが突出するというよりは,共存・併用・統合の時代になると,私は予想しています。共通する技術課題は3つあります。1つ目は,「基本的な作業能力の向上」,2つ目は,現場での教示,対話的な指示,遠隔操作でも容易に仕事を覚える「対話・学習能力の向上」,3つ目は,自動・協働,遠隔など,どれが適切かを判断する「自動・協調・遠隔でのシステム設計方法」です。
 「基本的な作業能力の向上」では,amazonの例で,深層学習によるバラ積み取り出しで,ロボット十数台で80万回のピッキングを行い,日常品に対応できるようになったものがあります。これらは深層学習を使わなくても,従来手法の特徴量設計でも可能で,成功率を同等レベルにすることができます。深層学習のメリットは,新しいものや環境に応じて追加で学習できるところにあります。ただし,イニシャルコストが大きく,新しいものや環境が変われば再学習が必要とするデメリットがあります。
 そこで,私たちの研究チームでは,物理シミュレーターだけから効率的に学習する研究を行いました。CNN(Convolutional Neural Network)に基づき,画像から把持の成否を識別するモデルを生成します。学習時間約17時間で,PCを放置しておくだけで6万4800サンプルの学習データを入手します。シミュレーターによる学習のみに基づく実ロボットピッキングで,実機とほとんど変わらない90%近い把持成功率を記録しました。また,絡みを予測するシミュレーターで,絡み合う物体を避けたピッキングもできるようになりました。
 一方「対話・学習能力の向上」では,私たちはサイバーフィジカルシステム研究棟で,ロボットが人を支援し,協調して作業可能な人・機械協調AI研究を進めています。現場で大事なのは,シミュレーションがなくても,人からロボットにダイレクトに作業を教えられるようになることです。そこで,AIにより人の作業から模倣的に作業を覚える産業用ロボットの作業動作自動生成システムの実現などを目指しているところです。

産業技術総合研究所 インダストリアルCPS研究センター 堂前 幸康

三菱電機株式会社 先端技術総合研究所主席研究員を経て,国立研究開発法人産業技術総合研究所に入所。現在,インダストリアルCPS研究センター オートメーション研究チーム長。同所人工知能研究センター付き,大阪大学招聘教授,奈良先端科学技術大学客員教授を兼務。パターン認識やロボティクスの産業応用に関する研究開発に従事。米国R&D100賞,情報処理学会喜安記念業績賞など受賞。博士(情報科学,北海道大学)

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