セミナーレポート

オムロンのコア技術“Sensing&Control+THINK”の集大成 卓球ロボットFORPHEUS-「人と機械の融和」の実現に向けて-オムロン(株) 技術・知財本部 センシング研究開発センタ 研究員 中山 雅宗

本記事は、画像センシング展2019にて開催された招待講演を記事化したものになります。

卓球ロボットの技術と機能

 ラリーを実現する卓球ロボットの技術には,まず,ボール・プレイヤー・ラケットをセンシングする技術が必要になります。卓球ロボットの目にあたる部分には,2台のRGBカメラを設置し,卓球台の全域を撮影しています。左右それぞれの画像からボールを検出し,3次元位置を計測します。現在,毎秒180回,誤差5 mm以下の高速・高精度の計測を実現しています。また,卓球ロボットの両肩にはモーションセンサーを1台ずつ装着し,プレイヤーの位置を計測しています。2台のカメラでプレイヤー位置をオクルージョンレスに,毎秒30回,位置誤差40 mm以下で計測します。さらに,卓球ロボットの口の部分にはRGBカメラを設置し,プレイヤーが持っているラケットの位置と姿勢を計測しています。ラケットには9つのマーカーを貼って,そのマーカーの位置をトラッキングすることで,物体の位置姿勢を求めています。現在,毎秒200回,位置誤差20 mm以下,姿勢誤差2.5°以下という,高速かつ高精度なデータ取得を実現しています。そして,最終的に,これらの異なるセンサーやフレームレートで得られたボール・プレイヤー・ラケットの情報を同期統合しています。
 センシングができたら,ラリーが継続しやすい返球計画と,無理のないラケットスイング計画を実現するTHINK技術が必要になります。エアロダイナミクスモデルとテーブルバウンドモデルという物理モデルをベースに回転速度を推定し,将来の軌跡を毎秒180回,予測精度20 mmという高速・高精度に計算します。過去の返球成功確率・プレイヤーレベルを考慮した返球を計画し,ラケットリバウンドモデルという物理モデルをベースに,ロボットの制御限界を考慮したラケットスイング指令を生成します。
 最後は,ロボットを高速・高精度にコントロールする技術です。FA現場で使われているオムロン製品(PLC,サーボドライバー)の構成により,ロボットを動かす6軸のモーターを高速・高精度に制御しています。

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オムロン(株) 技術・知財本部 センシング研究開発センタ 研究員 中山 雅宗

2015年 京都大学工学部物理工学科卒業 2017年 京都大学大学院工学研究科マイクロエンジニアリング専攻修士課程修了 2017年 オムロン株式会社技術・知財本部センシング研究開発センタ(現職)。卓球ロボットFORPHEUSのビジョンシステム開発リーダー

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