セミナーレポート

商用化が目前に迫る完全自動運転における画像センシング技術の重要性インテル(株) 事業開発・政策推進ダイレクタ 兼 名古屋大学客員准教授 野辺 継男

本記事は、画像センシング展2018にて開催された招待講演を記事化したものになります。

モノづくりからモビリティ事業への転換

 海外では,こうしてレベル4の実現性が高まったのと並行して,レベル3の困難性が認識されるようになりました。引き金となったのは,2016年5月のテスラのオートパイロット(※当時,自動運転ではない)による死亡事故です。
 この事故以降,レベル3の「自動運転システムが要求したらドライバー(人)はいつでも運転に戻れなければならない」という条件が付加されました。しかし,自動運転の性能が上がり,自動運転で走れる範囲が広がれば広がるほど,人は「状況認識を喪失」し運転に戻りにくくなります。
 レベル4では人が運転することを前提としていません。多くのクルマはハンドル・アクセル・ブレーキを持たない想定です。2016年の夏以降,欧米の自動車会社は,そうしたクルマを個人には売らずオペレーターに販売し,人や物を運ぶロボットタクシーのようなシェアリングサービスに供するか,自動車会社も自らサービス事業者になると発表してきました。各社とも2021年までに実現すると発表しており,GMは今年の年頭,市場導入を2019年に前倒しすると発表しています。  現在,米国では国を挙げてどの州でも完全自動運転の商用テストができる法案を通そうとしています。また,中国も国を挙げて渋滞問題の解消や環境問題や高齢化対策のためにも,所有から共有,EV(Electric Vehicle)でのモビリティ・サービス,自動化開発を進めており,ゴールは米国と同じです。これら二大自動車市場の動向を見て欧州企業も開発投資を急拡大しています。
 こうした自動運転とモビリティ・サービスを実現する技術の急速な発展から,自動車産業ではモノづくりからサービス事業への転換が必要になっています。さらに,モビリティ事業が拡大すれば,人と物の移動がより正確に把握・分析され,より効率的な都市計画も可能になります。また,今後市場が拡大する新興国等では既にモビリティ・サービスが拡大しており,クルマと人の関係が所有ではなく共有から始まる状況も顕著になっています。今後はクルマ産業としてシェアリング対象のクルマをつくり,世界的にモビリティ・サービスを付けて売ることが求められる可能性が見えています。そのモビリティ産業では市場ニーズを常時把握し得るサービスプロバイダーが産業ピラミッドの頂点に立つ可能性があり,自動車メーカーの意識変革が求められています。

インテル(株) 事業開発・政策推進ダイレクタ 兼 名古屋大学客員准教授 野辺 継男

早稲田大学理工学部応用物理学科卒。ハーバード大学PIRPフェロー。NECでPC事業,ソフトバンクでインターネット事業の立ち上げ,日産自動車でクルマのIoT化を行い,2012年,インテル入社。クルマのICT化から自動運転全般のアーキテクチャー構築に従事。2014年,名古屋大学客員准教授兼務。専門分野はICT全般の先端技術および事業開発など。

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