セミナーレポート

医用画像処理の現在と未来 診断治療を支える画像処理技術名古屋大学 森 健策

本記事は、画像センシング展2015にて開催された誰にでもわかる特別講演を記事化したものになります。

手術(検査)ナビゲーションの現在

 カーナビと同じように,医療の分野でも手術(検査)ナビゲーションの導入が進んでいます。手術ナビゲーションでは,内視鏡や鉗子がどこにあるかを表示する位置表示。内視鏡に対応した仮想画像を表示する対応画像表示。気管支ならどちらの枝に内視鏡を挿入すればよいかをガイドする挿入ナビゲーション。患者毎の3次元的なバーチャルな画像を表示する参照画像表示といったものが実用化されています。
 手術ナビゲーションで重要なことは,どうやって内視鏡・鉗子の現在地を知るかということです。これには,位置センサーを利用する,画像と画像をマッチングさせるという方法があります。また,解剖情報も重要になります。CTの画像中にどのような臓器があるか。解剖的な名称は何か。あるいはバリエーションの情報はどんなものかを表示させます。外科支援の画像情報処理では,画像認識理解と解析,可視化が必要になります。
 各臓器の抽出精度ということでは,膵臓は位置や形が多様で,自動抽出が難しく,抽出精度は60%台がやっとです。手術をする上ではリンパ節も重要です。機械学習によりリンパ節の検出を行いますが,現在7割程度。これを100%にしていく画像処理の技術開発が必要になってきます。また,今では機械学習により,血管毎の特徴量を求め,すべての血管に対して名前を振っていくことが可能になっています。
 こうしたさまざまな技術により,腹腔鏡手術ナビゲーションが実現しています。光学式位置センサーにより内視鏡の位置を取得。内視鏡に連動した解剖構造を表示し,それを見ながら医師同士がコミュニケーションを取り手術を行っていきます。ただし,画像は止めてしまうと立体感がわかりません。外科医は1秒2秒で瞬時に判断して手術をしていかなければなりません。マウスをクリックして画像を回転させている暇はありません。そこで直感的なインターフェースとして3Dプリンターで臓器モデルを作るということが,可視化手法として注目されています。

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名古屋大学 森 健策

1996年9月 名古屋大学大学院工学研究科情報工学専攻博士課程後期課程進学。1996年10月 日本学術振興会特別研究員(PD)。1997年4月 名古屋大学大学院工学研究科計算理工学専攻助手。 2001年4月 名古屋大学大学院情報科学研究科メディア科学専攻助教授。平成2001年8月 アメリカ合衆国スタンフォード大学医学部脳神経外科客員助教授。2009年10月 名古屋大学・情報連携統括本部・情報戦略室教授。

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