セミナーレポート

セキュリティ画像処理とそれを通して見た風景セコム(株) 黒川 高晴

本記事は、画像センシング展2015にて開催された誰にでもわかる特別講演を記事化したものになります。

セキュリティ分野での技術課題

 当社のセキュリティ技術の研究スタンスには,事業分野から生じる特性があります。1つめに,「取りこぼしゼロ」が基本になるということです。侵入者が入ってきた場合に侵入者と思わないということは絶対に許されません。ただし,人ではないものを人だと検知してしまう誤検知はある程度許容します。その場合,誤検知に対しては,緊急対処員が対応します。
 2つめは,結果に対する理由付けと,それに対する明確な対応が可能なことです。例えば,統計的な画像認識で,「もっと画像を集めればできるだろう」はNGということです。
 3つめは「悪意ある対象に対しても,正しい結果を出力すること」です。悪意ある人は,覆面で顔を隠しています。極端な例では,板で全身を隠していることもあるかもしれません。静止画で見るとただの板です。それを時間方向に解析しながら正しい判断をしなくてはなりません。しかも,屋外の植木の横や,ガラス張りのビルの入り口,強い光の中など,環境が異なるそれぞれの現場で,これらを満たすことが理想です。
 近年の画像認識では,多くのデータに基づく統計処理が基盤となります。そのため,人物の画像や人物以外の画像セットを多く集めるということを行います。しかし,いくら多くの画像を集めても,それは人物画像のごく一部にすぎず,集めた画像によって性能評価の結果が大きく異なるということが問題になります。
 また,なぜそのような結果が出たのか,分かりにくいということも問題です。例えば,人物の輪郭線を数値化する場合,画像を細かいブロックに分け,ブロックごとにどんな線があるかヒストグラムを作ります。そして全ブロックのヒストグラムを結合し,巨大な数値の列を作ります。これが,PCが扱う人の特徴量ですが,もはや人間には理解できません。
 それでは,実際にどうするのか。統計処理に頼りすぎず,意味の分かる量を扱い,人の知識を活かすこというのが重要になります。一見,泥臭い方法ですが,不審者が傘で身を隠していた場合,風に舞う傘はこんな動きはしない,当然だという人の知識を活かすということです。

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セコム(株) 黒川 高晴

1997年,東京大学計数工学科計測専攻修士卒業。同年,セコムに入社。以降,画像圧縮,任意視点画像生成,移動カメラ監視,屋外監視,人物検知,人物追跡,セグメンテーションなど,コンピュータービジョンの研究開発に従事。2009年,IS研究所 画像新技術グループ リーダー。2012年よりIS研究所 ビジョンインテリジェンス・ディビジョン マネージャー。主な興味は中間ビジョンとビジョンアルゴリズムのアーキテクチャ。

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