セミナーレポート

生活支援ロボットの開発 ~障がい者,高齢者,およびその家族や介護者のQOL向上のために~トヨタ自動車(株) 服部 祐人

本記事は、画像センシング展2014にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。

障がい者支援から,高齢者,一般家庭の支援へ

 HSRは「物を拾う」「物を取ってくる」「操縦する」という3つの基本機能があります。タブレット端末からの命令を受けたHSRは,ロボットに搭載されたセンサーで正確な位置を把握し,物をつかむ際はどこに腕を伸ばし,どの角度でつかんだらよいかを判断し,落ちた物を拾い,人に渡すことができます。写真や紙などの薄くてつかみづらい物でも,ロボットアームの先端(ハンド)部分に吸引できる機構を備えており,吸着して拾うことができます。
 また,棚から指示された物が入った整理箱を取ってくるというように,事前に登録した物体であれば,何をどこから取ってくるのかを指示することで持ってくることができます。家庭内では狭い場所を移動しないといけないという場合があります。頭につけたセンサで3次元の情報を把握し,狭い場所での自律移動を実現しています。さらに,ロボットが自動では難しい作業も,ロボットを人が操作する事で,遠隔の家族がコミュニケーションを取りながら,ロボットにカーテンを開けさせたり,水を取ってきてあげたりということもできます。
 手足の不自由な方のうれしさ,使い勝手などをご自宅で評価し,生の声を今後の仕様検討にフィードバックすることを目的に,横浜市総合リハビリテーションセンターの協力でタイプの異なる2名のご自宅で評価を行いました。現時点での機能では重度の障がい者の方には,よりうれしさが大きいということがわかりましたが,今後,自律機能を拡充させ,簡単で多様な作業ができるようになれば,利用者を広げることができる可能性があると考えています。現在,展示会などでニーズ調査をしながら,継続的に開発を進めています。さらに,HSRの特徴である小型,広作業領域,安全,高いソフトウェア拡張性を生かして,研究から実証評価までスルーで活用できる研究プラットホームとして,ロボット研究者の方に提供できればと考えています。
 私たちが目指す社会は,「すべての人が明るく楽しく生活できる社会の実現」です。人の役に立つパートナーロボットを開発し,そのような近未来社会を実現できればと考えています。お客様の「笑顔のために。期待を超えて。」というスローガンのもと,今後も開発に取り組んでいきます。

トヨタ自動車(株) 服部 祐人

2000年 長岡技術科学大学大学院修士課程修了
2000年 株式会社リンクス入社,画像システム事業部勤務
2004年 トヨタ自動車株式会社入社,パートナーロボット部勤務

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