セミナーレポート
“考えるクルマ”と交通社会の未来日産自動車(株) 二見 徹
本記事は、画像センシング展2014にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。
防衛的制御から能動的制御というさらなる進化へ
今までのシステムは,何か自分の身の回りに危険なことが生じてから反応するというプロテクティブ(防御的)な考え方でつくられています。言わば受け身の姿勢です。そこで,プロアクティブ(能動的)に,危険になりそうなことを予測して,より安全なところに逃げてしまう。これを連続動作で行っていくと,自動運転になります。自動運転は,高速道路と一般道では考え方が違ってきます。高速道路では様々なセンサーで物体を360度検出するという機能が重要になります。特に,高速道路の自動運転では,「自動合流」「遅いクルマの追い越し」「狭路区間の通過」「緊急自動操舵回避」「緊急路肩回避」「本線離脱&交差点停止」といった一連の動作が必要になります。一般道では,レーザースキャナに加え,360度の視界をカメラで構成していくことが求められます。なかでも難しいのは交差点の通過,路肩停止車両の追い越しです。一般道の事故率は高速道の11倍と言われており,認識しなればならないものの数は膨大になります。ポイントは認知,判断の処理で,交通ルールや運転知識,ドライバーの好み・癖を反映できないと,不安で自動運転に任せられません。
自動運転では,自律型自動運転だけではなく,渋滞を巻き起こさないためのスムーズな運転を実現する車・車間協調型自動運転が求められます。さらに,交通システム全体で自動運転を使うためには,適切な速度や車間距離を指示し,それに従って自動運転していく中央管制型自動運転が重要になります。これらにより渋滞の改善にもつながると考えられています。
今後は,自動運転のクルマに,電力ネットワークと管制制御がサンドイッチされる形で道路交通が構成されてきます。それが2020年から2030年の日本の交通社会の一つの雛形になるのではないかと考えています。
日産自動車(株) 二見 徹
1981年 東京大学 工学部電子工学科卒業 1981年 日産自動車株式会社入社 中央研究所にて車載電子システム研究を担当 1987?1990年 電子設計部にて車載電子システム開発を担当 1991年 ITシステムの企画・開発を担当 2005年 IT&ITS開発部にて企画・開発を担当 現在 IT&ITSシステム及びEV-ITシステムの企画,開発を担当 受賞暦:1999年 SAE(米自動車技術学会)最優秀論文賞受賞